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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百七十一 沙奈子編 「最初の五百円玉」

僕の言ってることを理解できない人。このニュアンスが伝わらない人。そういう人がいるのも紛れもない事実だと僕も分かってる。分かってるから、そういう人に理解してもらおうとは思わないし、ましてや押し付けるつもりなんかぜんぜんないんだ。自分の考えを一方的に押し付けようとすることで何が起こるかなんて、実例はそれこそ掃いて捨てるほどあるよね?。起こってるよね?。そしてその実例に目を向けることさえできない人も、珍しくもなんともないよね。たとえ見ていても認識していても、


『自分だけは大丈夫。上手くいく』


と考える人も珍しくないよね。犯罪行為に手を染める人なんかそれこそそういう考えでやってるんじゃないのかな?。


社会にはそんな事実がある中で、沙奈子はさらに話してくれる。


「お父さんがお小遣いくれるようになったのも、あの頃だったね」


不意に思い出したみたいに口にした彼女に、


「そういえばそうだったね」


僕も思い出しつつ応える。すると沙奈子は、


「でも、ホント言うと最初はお小遣いってなんかよく分かんなかったんだ。もらってもどうしたらいいのか分かんなかった。でも、お父さんがくれたのが嬉しくて、宝物みたいに思えたんだよ。だからあの時の最初の五百円玉は、今でも大事にとってる」


だって。


「そうなの……!?」


決して大きな声じゃないけど、僕は驚いてそう口にしてしまってた。あの時はてっきり、初めてお小遣いをもらえたのが嬉しくて大事にタンスの引き出しに仕舞ったんだと思ってたけど、実際にはそれ以上だったんだね。


『お小遣いの意味さえよく分からなかった』


なんて。


これもやっぱり、僕が思ってたのと実際に沙奈子が感じてたものとのギャップだな。それが今になって判明してきた。人生には、人間関係には、往々にしてこういうことがあるんだろうなと改めて思う。自分が思ってることが常に正しいとは限らない。自分の解釈が常に的を射てるとは限らない。そういうことなんだ。


だから僕は、自分のやったことがいい結果をもたらしたとしても思い上がるのはよそうと思える。僕のやったことを相手が僕の考えてる通りに受け取ってくれて想定通りにことが進むなんて、当たり前にあるものじゃないんだって分かるから。決して僕自身の力だけで成立するものじゃないと分かるから。僕の考えてる通りに相手が受け取ってくれるのは『相手のおかげ』なんだ。僕はただなるべく誤解を生まないように提示するだけなんだよ。



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