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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百六十七 沙奈子編 「奇跡みたいなもの」

「絵里奈や玲那のこともそうだけど、千早ちはやちゃんのことも、奇跡みたいなものだったね……」


当時の諸々を思い出してしみじみそう言うと、


「うん。千早のことも最初は怖かった……。でも、今はすっごく好きだよ。『親友』って思える……。今日だって、千早が助けてくれたみたいなものだし」


沙奈子も穏やかに応えてくれた。そこにちゃんと彼女の本心があるのが伝わってくる。無理をしてないのが分かる。無理をしてたらこの表情はできないと感じるんだ。とても我慢強い彼女だけど、実際には感情が表に出やすい子だっていうのもあるのは確かだから。大事なのは、周りがそれを読み取れるかどうかだけ。


ああでも、『感情がまったく表に出ない人』なんて滅多にいないんだろうな。あくまで『誰でも分かるようなそれ』か、『その人のことをよく知ってないと違いが分かりにくい』かの違いだけで。


『そこが難しい』と言われればその通りだとしても、僕にとって沙奈子は、


『ちゃんと気持ちを理解したい相手』


だから、『分かりにくい違いについても察したいと思えるんだ』というのは確かにある。そんな沙奈子が口にするからこそ、『親友』という言葉も空々しく聞こえなかった。彼女にとっては確かにそうだから自然とそんな風に表現したんだって分かる。


世の中にはすごく軽々しく『友達』や『親友』って言葉を使う人もいるみたいだけど、その人にとってはもしかしたらそうなのかもしれないけど、『ただの知人』『ただの顔見知り』『ただの同級生』『ただの同僚』を『友達』や『親友』と呼んでしまう人の感覚は僕には理解できないし、親しくしたいとは思えないな。その辺りの感覚のズレは、長く付き合っていくには厳しいものだと感じてるんだよ。


もちろん、自分以外の人が自分とまったく同じ感覚や価値観を持ってるなんてことは有り得ないと思うよ。たとえ血の繋がった家族でさえ分かり合えない部分があるのは、自身の実体験として痛いほど感じてるから。僕の両親や兄とは、『永久に分かり合えないだろうな』という実感しかない。


だから沙奈子とだって、


『すべて分かり合えてる』


とは思わない。そんな実感はない。だって、


山下典膳やまもとてんぜんさんが自分の実の父親と同姓同名かつ見た目もなんとなく似てるというだけで、何年も当たり前のように続けてきたことが突然できなくなる』


という感覚が、僕には理解できないからね。その事実一つをとっても、『すべて分かり合えてるなんてのはない』って分かるよ。



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