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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百五十七 沙奈子編 「微妙な立場」

あの頃、沙奈子がおねしょするようになってしまったのは、それまでの境遇と違いすぎて、幸せを実感してしまって、逆にそのことがストレスになってしまってた可能性が高いというのも、山仁やまひとさんが指摘してくれたことだったな。


なにしろ、玲那の事件があって、それで沙奈子が表情を失ってしまった頃におねしょが止まったからね。つらい環境に過剰適応してしまってて、だからこそつらい状況に陥ったのをきっかけに止まってしまったというのもあったみたいだし。


いや、それ以前にも、児童相談所への嘘の通報が原因になって僕と引き離されそうになって、それでボールペンで自分の左腕を突いて血塗れになったりという事件があった時も、一時的ではあるけどおねしょが止まってたりもしたな。


そんなこともありつつも、僕のところに来る以前よりは穏やかな毎日を何ヶ月にもわたって続けられてきたのにも拘わらず十分に馴染めてなかったってことだろうから、


『生まれてからずっとつらい環境にいた』


という事実がどれほどのものなのかが逆に思い知らされる話って気もする。


玲那が事件を起こしてしまったのだって、結局はそれが原因だからね。


ただ同時に、改めて思い出した。玲那が実の母親の葬儀に顔を出すことになったのは、『実の母親の葬儀だから』というだけじゃなくて、戸籍上は同日に生まれたことになってる絵里奈を養親とした養子縁組を行うために、実際は日付が変わってすぐに生まれて、でも前日がたまたま大安だったことで病院側が気を利かせて日付が変わる前に生まれたってことにしてくれたから絵里奈と誕生日が同じになってしまってただけなのを、母子手帳に記された出生時間で確認するために取りに行ったというのもあったんだった。


だけどそれも、実際にはそこまでする必要はなかったはずなんだ。たとえ絵里奈とは養子縁組できてなくても、僕とは養子縁組できてて、その上で僕と絵里奈は法律上の夫婦なんだから、玲那も事実上は僕と絵里奈の『子供』なんだよ。むしろ、戸籍上の親の承諾がないと未成年の場合は養子縁組が行えないことで今でも法律上は『僕の姪』で『絵里奈とは赤の他人』でしかない沙奈子の方が、微妙な立場なんだよね。


とは言っても、もうここまで『事実上の親子』として過ごしてきた前提があるから、そこまで気にしなくていいみたいだ。何しろ『七年』だから。七年、消息も知れない実の両親の代わりに親として沙奈子を養育してきた実績が僕にはある。血縁上戸籍上の両親が親としての権利を主張でもしてこない限りは、別に問題もないんだよ。



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