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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百四十六 沙奈子編 「現在の積み重ね」

「おかえり」


僕が改めて迎えると、沙奈子は、


「ただいま」


と穏やかな表情で応えてくれた。


本当にそれが何よりだ。彼女の将来とか、『SANA』の今後とか、気になることは確かにいくつもあるけど、先のことをただ心配しているだけじゃ状況は何も変わらない。


先のことはまたその時に考えればいい。その時点の状況とかも合わせてじゃないと きっと空回りするだけだろうから。


備えというものは確かに大事だけど、僕もそれを疎かにしようとは思わないけど、無駄になることも見越してするものだからね。


それに将来というのは、どこまでいっても現在の積み重ねだから。


『現在』を疎かにしていて『将来』は掴み取れないんじゃないかな。


だから僕は言うんだ。


「人生ってのは思いがけないことの連続だよね。でも、こうやって家に帰ってきたらほっとできたら、また頑張れるんじゃないかな。


上手くいかない時があってもいいし、落ち込む時があってもいいと僕は思う。何があっても僕は『おかえり』って言うよ。僕は沙奈子の父親だからね。


だけど今日のところはお疲れ様。ゆっくり休んで」


そんな僕に沙奈子は、


「うん……」


ほっとした様子で微笑んでくれる。


そんな彼女を見て僕も安心する。




それからも沙奈子は、ドレス作りはしなかった。玲緒奈れおなを膝に抱いて絵本を読んでくれた。


しかもいつもは一冊二冊なのが、続けてずっと読んでくれることに、玲緒奈も嬉しそうだ。


一冊読み終えると次の絵本を自分で取ってきて、どっかと沙奈子の膝にまた座る。沙奈子の方もそれを嫌がるでもなく当たり前のように読んでくれるんだ。


お互いにお互いの存在が当然のこととしてそこにあると受け止められていて、いつもと違うのに、まるでそれがいつものことみたいに、まったく不自然じゃない。


いつもと違っていてもそこにいるのは自分のお姉ちゃんなんだと、そして今日はいつも以上に甘えていい日なんだと、玲緒奈も察してるみたいだ。


確かにお姉ちゃんがいつもと違うけど、玲緒奈にとって不安を感じるような違いじゃないということなんだろうな。


そういうところからも、沙奈子の精神状態が垣間見える気がする。まだ二歳で、周囲の人たちの気分次第ですごく怖い思いをしたり悲しくなってしまったりするはずの赤ん坊同然の小さな子供が落ち着いてられる精神状態を、沙奈子自身が保ててるという証拠なんじゃないかなって気がするんだよ。


だったら僕たちが狼狽える必要もない。いつもと違う沙奈子の様子に怯える必要もない。


そういうことなんじゃないかな。



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