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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百四十二 沙奈子編 「親の出番は」

『今日はみんなでご馳走にしよう』


千早ちはやちゃんのそれは、ただのその場の思い付きだったのかもしれない。


『こんな時にはこうしよう』と事前に考えていたことじゃなかったのかもしれない。だけど、答の出ないことでただ懊悩してるよりはよかったんじゃないかなって僕も感じた。


なにしろ、沙奈子も料理の方に集中できてたから。


僕が助け舟を出さなくても気持ちの切り替えができたらしいのは、正直なところ複雑な気持ちにもなる。


「なんか、親の出番はなかったみたいですね……」


玲緒奈れおなを膝に抱いてモニターを見ていた絵里奈も、少し寂しそうにそう言った。今ではすっかり沙奈子の母親になれた彼女の本音が漏れ出てる気がした。なにしろ、料理にさえ手出しする必要もなかったからね。今でも料理の腕前自体は絵里奈の方が上かもしれなくても、普段食べる家庭料理としては、沙奈子や千早ちゃんの作るそれはまったく問題ないしね。


すると、


「でもまあ、これはこれで喜ばしいことじゃん?。子供が成長してるってことだしさ」


玲那が微笑みながら言ってくれる。


「確かに、その通りだね」


僕もそう応えるしかなかった。いつまでも親だけに頼ってるというのも、ある意味じゃ不健全なんだろうな。だって親は、たいていの場合は子供より先にいなくなるし。


僕自身、親を頼って今の自分になったわけじゃないから。もっとも、頼ろうにももうずっと以前に亡くなってるけど。


だから沙奈子に千早ちゃんたちがいるのは、すごく喜ばしいことのはずだというのは、分かってるんだよ。分かってるんだけど、同時に寂しさもある。僕に依存しきってたあの子が、僕じゃない誰かの支えで笑顔になれるのがね。


けれど、そこで妬んで余計な干渉をしてしまう親というのが、『子離れができていない親』ってことなんだろうな。


僕も、子供の成長を素直に喜べない親ではいたくないよ。


そんな僕たちが見守る前で、次々と料理が出来上がっていく。しかも、


「今日は沙奈んちで作った料理持って帰るから」


大希くんが山仁やまひとさんにそう電話してた。同じように結人くんも、


「沙奈の料理持って帰るからよ。勝手に飯食ってんじゃねーぞ」


鷲崎わしざきさんに電話して。


千早ちゃんも、お姉さんにメッセージを送ってたみたいだ。そしてそれぞれ、作った料理をタッパーに詰めていく。


沙奈子たちや僕たちだけじゃ食べ切れないほどの料理を作っていってたからね。しかも、手間と時間の掛かる料理まで始めて。


今日はとにかく、料理だけに時間を費やそうということだね。


その中で沙奈子も、ドレスを作れなかったことも忘れたみたいに楽しそうに料理を作ってたんだ。



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