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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百四十一 沙奈子編 「今日はみんなで」

『SANA』を起業するずっと以前からそれこそ数えきれないくらいに繰り返し、息をするみたいに当たり前に続けてきた『ドレス作り』なのに、これまで通りに裁縫セットを開けて生地を手にした沙奈子は、まさに『息の仕方を忘れた』みたいに動けなくなっていた。


「え……と。あれ……?」


滅多に見せない彼女の狼狽えた様子に、


「沙奈子……」


僕も思わず動揺してしまう。


こういうこともあるかもしれないと覚悟していたはずなのに、いざそれが現実のものとなると、これだからね。だから僕は偉そうになんてできるはずがないんだ。こんな僕が偉そうにしててそれで信頼を得られるはずがないよ。


でも今はそんなことより、


「沙奈……!」


千早ちはやちゃんが改めて沙奈子を呼んだ。


そして、


「今日はもう、休もう!。休んで料理作る日にしよう!。ね?」


って。


変に慰めようとするでもなく、励まそうとするでもなく、ドールのドレス作りと並んで沙奈子が得意とする料理作りを持ちかけるのは、千早ちゃんにしかできないことだったのかもしれない。僕がこの場にいてもそれは思い付かなかったんじゃないかな。僕だとたぶん、ただ、


『気にしすぎない方がいい』


みたいな言い方しかできなかった気がする。言葉で分かってもらおうとするだけだった気がする。


それとどちらが良かったのかは分からないけど、


「……うん」


千早ちゃんの勢いに沙奈子も素直に頷いた。そして裁縫セットを片付けて、厨房の方に移って、


「今日はみんなでご馳走にしよう」


言いながら冷蔵庫を開けて中の食材を片っ端から出してくる千早ちゃんと並んで、


「じゃあ私はナス味噌炒めにする」


今度は躊躇なく始めることができた。ドレス作りはできなかったのに、料理はこれまで通りにできたんだ。


そんな二人を、大希ひろきくんが、結人ゆうとくんが、一真かずまくんが、篠原さんが、手伝ってくれる。


『ああ、これも、人生部としての活動なんだな……』


モニターに映し出される光景を見て、僕はしみじみそう感じた。人生において起こりうるあれこれにどう対処していくかを考えるのも、人生部の活動の意義だからね。


そうなんだ。人生ってのは、どんなに上手くやろうとしてもその通りにいかないことなんていくらでもある。そして躓いたり頭を打ったりすることもある。自分の家族や身近な誰かがそうして呆然となってしまった時に何ができるかを考えるのも、人生を生きる上では必要なことなんじゃないかな。『備え』ってもんじゃないかな。


もちろんそんなことはあってほしくはないんだけどさ。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >『SANA』を機業するずっと以前 機業→起業 ではないでしょうか
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