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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百三十二 沙奈子編 「ついつい思い込んで」

だからってもちろん、


『常識はすべて間違ってる』


と言いたいわけじゃないんだ。常識というものの多くは、元々は平穏に幸せに生きていけるように願う気持ちが根底にあると思うから。


それがたとえ、一部の限られた人たちにとってのそれであってもね。


だから、その人たちにとっては都合の悪いものを貶めるような意味合いを持つものになってることも少なくないんだろうな。


だけどそれでも、


『幸せに生きたい』


という気持ちそのものは確かにあるんだろうと思うし、そのこと自体は否定するべきとは思えない。


『わだかまりはあっても、それでも自分を生んでくれた人を送るためだから』


そう考えて敢えて葬儀に出席することを選択する人がいてもきっと否定されるべきじゃないし、僕はその選択については尊重したいんだ。


ただあくまで、玲那の場合は適切な選択じゃなかったっていうだけで。玲那の実の父親は、彼女のそんな想いすら踏みにじるような人だというのを分かってなかったというだけで。


同時に、あの時の玲那にその判断をさせようというのも、さすがに無理があったと思う。冷静に考えられるような状態じゃなかったから。そもそも直接の被害者が加害者のことを冷静に考えられるかと言えば、それも難しいんじゃないかな。どうしても感情が先に立ってしまったり逆に委縮したりして視野が狭くなってしまうだろうし。そして玲那がそういう状態だっていうことを周囲がきちんと把握するにも、それなりに時間が必要になるだろうし。


だったら、今回の沙奈子の件にしても、焦って『こうするべきだ!』って決めつける必要はないと思うんだ。第一に考えるべきは沙奈子自身の精神状態で、沙奈子本人じゃない僕たちが彼女の精神状態を理解するにも『一瞬で』とはいかないだろうからね。ある程度は察することができても、それ自体が『受け取る側の解釈』込みになってしまうはずだから。


『彼女のことだからきっとこう考えてるに違いない』


とついつい思い込んでしまうのも人間というものだと思う。


その点についても、千早ちはやちゃんたちはすごいな。


「まあ正直、沙奈にとってホントの父親のことがどんだけキッツイのかは、私には分かんない。でもさ、力になりたいなって思うのはマジだよ」


「そうそう。僕が不登校になりかけた時もさ、僕のお父さんだって僕の気持ちを完璧に分かってくれてたかって言ったら、そんなこともなかったしね。でも、分かろうとはしてくれてた。それについてはすごくありがたかった」


「俺だって沙奈の気持ちが完璧に分かるわけじゃねえしな」



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