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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百二十八 沙奈子編 「僕は君の」

沙奈子や玲那は、元々は間違いなく被害者だよ。被害者以外の何者でもないと思う。だけど世の中には被害者だった人や被害者の家族だった人が次の加害者に回るということも決して少なくないよね。


傷付けられたことを理由に、今度は自分が傷付ける側になろうとするんだ。そしてそれを当然の権利のように思ってたりもするんじゃないのかな。


だけど僕はそれを『当然の権利』だなんて思わないし、沙奈子や玲那や玲緒奈にもそんな風に思ってほしくない。『批判』と称して誰かに対して罵詈雑言を投げ付けるような姿を見たくない。


自分が傷付けられた事実をそんな形で埋め合わせようとするのは、ただただ不幸を広めることにしかならないと思うんだ。


特に今回は、山下典膳やまもとてんぜんさん自身には何の落ち度も責任もないことだから。それを理由に典膳さんを責めるのももちろん、典膳さんを責められないからって他の人に八つ当たりをして憂さ晴らしをするなんてのも筋違いも甚だしいと思う。


沙奈子や玲那や玲緒奈が、そんなことをする必要がないように僕はこれまで努力してきた。努力してきたつもりなんだ。


そして、今の玲那の様子を見る限り、彼女が加害者になろうとするような心配はないと感じる。


加えて玲那は、かつて加害者にもなった経験があるから、その時の経験もしっかりと活かしてくれてるのが分かる。


自分を虐げてきた加害者である実の父親を殺そうとして、より一層、つらい思いをした。


普段は復讐を礼賛してるような人たちまでが、彼女を一斉に攻撃して、それこそ死ぬまで追い詰めようとしていたからね。


その経験も、彼女は活かしてくれてるんだ。それを活かすことができるような、それだけの精神的な余裕を持てる環境を保つのを、僕は心掛けてきた。


その結果が今、目の前にある。僕はそれがたまらなく嬉しい。


玲那は、せっかく自分が掴んだ幸せを台無しにしようとするような子じゃなくなってるんだよ。


世の中には本当に些細なことで誰かを攻撃しようとして逆に自分が袋叩きに遭うような振る舞いをする人もいるからね。


だけど、僕の『長女』は、玲那は、


「私も一緒に沙奈子ちゃんを支えていくから、何も心配しなくていいよ。パパちゃん♡」


彼女の肉声を基にした合成音声だけど、今ではすっかり、


『玲那の声』


になったそれで、きっぱりと言ってくれたんだ。


ありがとう、玲那。


色々と大変なこともあったのは事実だけど、僕は君の『父親』になれて本当に良かったと思ってる。



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