表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2526/2601

二千五百二十六 沙奈子編 「初々しいなあ」

『ここでいたるさんまで慌ててたら、私、きっとパニックになってしまってました』


絵里奈の言ったことがまさにそれだと思った。まさかの事態に直面して、みんながみんな狼狽えていたら冷静な判断ができる人がいなくなって、余計に状況を悪くしていたかもしれない。山下典膳やまもとてんぜんさんに対してあらぬ疑いをかけたまま余計なことをして迷惑を掛けるようなことをして関係を拗らせるような事態だって有り得ただろうな。


それでなくても、『実の父親のことを思い起こさせる』というだけでも沙奈子の心理に与える影響はきっと小さくなくて今後のドレス作りに支障が出る可能性だってあるのに、その上、典膳さんとの関係を拗らせたりしたら、ますます『SANA』の存続自体が危ぶまれると思うんだ。それじゃ駄目なんだよ。


だから、早々に誤解であることをお互いに把握して、その誤解に足を掬われないようにお互いに気を付けていかなきゃいけないと改めて思った。


「僕が冷静でいられたのも、絵里奈や玲那やみんなのおかげだよ。絵里奈と玲那が沙奈子の傍にいてくれたから任せておけたし、玲緒奈れおなが僕の傍にいてくれたから『冷静にならなきゃ』って思えたっていうのもあるんじゃないかな。そういうのがあってこそだって気がする。僕の方こそありがとう」


そう言って頭を下げると、


「そんな!。私の方こそ……!」


絵里奈も慌てて頭を下げてくれた。そんな僕たちを見て玲那が、


「もう結婚して何年にもなるのに、初々しいなあ」


と呆れたように笑ってた。


そうだね。結婚して何年も経てばお互いに遠慮がなくなったりするのも多いのかもしれないけど、だけど僕は、『遠慮がなくなる』のと『配慮がなくなる』のは同じじゃない気がしてる。遠慮はなくなってもいいにしても、配慮をなくすとそれは相手を人間として認めてないことにも繋がってしまいそうにも感じるんだ。しかも、


『配慮なんかしなくていい』


と甘えてるって形にもなってしまうだろうし。大人としてそれはどうなのかな。身近な大人がそんな風にしてて、その姿を間近で見てて、子供は何を学ぶかな。


『家族に対しては配慮なんかしなくていい』


みたいに思ってしまったりしないかな。それはあまりよくないんじゃないかな。


『親しき中にも礼儀あり』


とも言われるしね。家族だからってなにも配慮しなくなったら、お互いに良好な関係を保つことができるのかな。できないような気がして仕方ない。


確かに絵里奈の場合は、僕に対してもいまだに敬語を使ってて他人行儀にも思えなくはないけど、だからって本当に他人行儀ってわけじゃないのは、僕も分かってる。


ただ、砕けた言い方に変えていくタイミングを逸しただけなんだろうな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ