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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百二十四 沙奈子編 「おかえり」

『よかった。大丈夫なんだね』


僕の言葉に、


「うん」


決して『力強い』とかそういうんじゃないけど、同時に、何か無理をしてるみたいな印象はまったくない穏やかな返事だった。


それが僕には分かる。分かる関係を築けてきたんだって実感する。普段の様子をよく知ってるのはもちろんのこと、心配事があったり不安だったりつらいことがあった時の声の調子を知ってるからこその直感だった。小学校四年生の時に千早ちはやちゃんにつらく当たられて、


『学校に行きたくない』


と僕に打ち明けてくれた時の声の調子とももちろん違うし、ニュースで嫌な事件を見た時に、


『どうしてそんなことするのかな……』


みたいに呟く声の調子ともまったく違うんだ。


「大丈夫なんだったらいいよ。玲緒奈れおなと一緒に待ってる。気を付けて帰っておいで」


「うん、分かった」


短いやり取りだったけど、もうそれで十分だった。


そして三十分ほどして、


「ただいま」


玄関で玲那の声がして、


「おかえり」


「おか~!」


玲緒奈と一緒に階段の上で出迎えた。すると、


「おかえり! 沙奈!」


「おかえり」


一階の『人生部の部室』の方でも千早ちはやちゃんたちが出迎えてくれて、沙奈子はまずそっちに向かった。


以前なら一にも二にも僕のところに来たはずの彼女が千早ちゃんたちの方に行った事実に、寂しさを感じなかったと言ったら噓になるけど、でも同時に、沙奈子の世界がそれだけちゃんと広がってるっていう事実も表してるんだと思えて、それはそれで嬉しかった。いいことだと素直に思えた。


「ただいま」


沙奈子を千早ちゃんたちに任せて二階に上がってきた絵里奈が改めて口にすると、


「ママ♡」


玲緒奈が抱きついていって。


「ありがとう、玲緒奈」


絵里奈の表情も穏やかになる。安心できたのが分かる。今はそれでいいと思う。


「あ~、やっぱ家に帰るとホッとするね」


一緒に上がってきた玲那も少し疲れたような笑顔だけど言ってくれた。そしてそのことが『答』だった。僕が狼狽えて余計な何かをしでかしてしまわなかったのが二人の安堵感に繋がってるんだって思えた。


それと同時に、


『帰ってくるとすごく安心できる家』


というのを作り上げてこれたからこそのものだって。


「紅茶でも淹れようか?」


問い掛けると、


「はい、お願いします」


「だね。ありがと」


玲緒奈を抱き上げた絵里奈が言って、玲那が笑顔になった。


だから僕は、二階のミニキッチンに置いてある電気ポットにまずは二杯分だけ水を入れてスイッチを入れた。これならすぐに湧くからね。その間に戸棚からティーカップとティーバッグを取り出して、紅茶の用意を始めたんだ。



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