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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百二十 沙奈子編 「物語のように」

星谷ひかりたにさんでさえ動揺するような事態を千早ちはやちゃんたちに告げる必要は、今のところはぜんぜんないということを改めて確認して、僕は、彼女たちの様子を見る。


出来上がったケーキを大事そうに冷蔵庫にしまう光景に、ぐっとくるものも感じてしまった。


彼女たちの気持ちがそこに込められてるのを感じてしまって。そこに至るまでのいろいろが頭をよぎってしまって。


本当にいろんなことがあったよね。千早ちゃんとの出逢い。大希ひろきくんとの出逢い。結人ゆうとくんとの出逢い。


千早ちゃんとの出逢いもすごく印象的だったけど、結人くんについては、修学旅行の時に中学生とトラブルになったり、喜緑きみどりさんの振る舞いを誤解して鷲崎わしざきさんを守るために飛び掛かろうとしてアパートの階段から転落した上に沙奈子にぶつかったりと、大変な波乱万丈ぶりだったと思う。


それこそ、物語のように。


さらには、玲那の事件。


あの時は、


『どうしてこんな不幸なことが起こるんだろう?』


と嘆きもしたけど、千早ちゃんや大希くんや結人くんが沙奈子を支えてくれたから、僕もまだなんとか持ちこたえることができたんだと思う。


しかも次には、イチコさんと大希くんが『七人殺しの役童えきどうの孫』だという事実が分かって。それでも、イチコさんも大希くんも、真っ直ぐに育ってくれた。


そのことを思えば、今回の出来事なんてそれこそ些細な話のように感じられてしまう。


だけど、そうじゃない。そうじゃないんだ。他の大変な出来事と比べてどうとかじゃなくて、沙奈子本人にとってはどうだったかというのが大事なんだ。


『他にもっと大変な人がいるんだからこのくらい我慢しろ』


じゃなくてね。


嫌なんだよね?。そうやって他人と比べられるのが。自分よりつらい境遇の人がいるからって、それと比べてどうとか言われるのが。だったら自分も他の人に対してそんな言い方をしない方がいいんじゃないかな。


僕はそう思うし、沙奈子や玲緒奈れおなにはそんな言い方をしてほしくないんだ。ましてや、


『他人の気持ちを考えろ』


なんて言うんだったらそれこそできないよね。


自分の実の父親だということも確定してないのに過呼吸を起こして倒れてしまうほどのショックを受けた沙奈子の気持ちを考えるなら、『他にもっと大変な人がいるんだからこのくらい我慢しろ』なんてことを言えるはずがないよ。


同時に、詳しい情報もないのに断片的なことだけ知らされて心配だけさせられる千早ちゃんたちの気持ちも考えると、今はまだ報せるという選択はできないんだ。



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