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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百十七 沙奈子編 「物語を見てる人」

普通の物語だったら、ここで大変なピンチに陥って、それをみんなの力を合わせて乗り越えていくことで盛り上がるんだろうけれど、そんなことが都合よく起きるというのがそもそも『ご都合主義』というものだよね。


僕たちはむしろそんなことがあって欲しくないから備えるようにしてきたんだ。


それでもなお、『思いがけないこと』というのは起こる。僕だってまさか山下典膳やまもとてんぜんさんが僕の兄と同性同名で、しかも沙奈子が強く動揺してしまうほどの影響があるなんて、さすがに想像もしていなかった。


山下やましたという苗字自体、とてもありふれたものだから、 同じ苗字の人が現れても、それを何かの予兆みたいに捉えることはいくらなんでもできない。


これが、山仁やまひとさんや星谷ひかりたにさんみたいに『ありふれてない苗字』だったら、『何らかの親族関係にあるのかな』と思ったりするかもしれなくてもさ。


確かに物語なら、同じ苗字の人がいるのは紛らわしいだろうから避けるようにして、その上で敢えて同じ苗字の人を出す時にはそれなりの意味を持たせているのかもしれないにしても、そんな風に捉えられるのは、結局、『物語を見てる人』だからだよね。


いわゆる、『神の視点』という形で見てないと、そんな風に察することはできないだろうな。


たとえ僕たちが誰かが作った物語の登場人物にすぎないとしても、それ自体を僕たちが知ることはできないんだし、そこまで気にしてはいられないよ。どういう人生であっても、その中で自分にできることをして、生きていくしかないんだ。


人間にできることって、結局はそういうものなんだろうな。神様とか神様みたいな世界を超越した存在をいくら夢想したって、同じ次元に立つことはできないんだろうから。


今回のことについても僕たちの知らないところで何か途轍もない存在が仕組んだものであろうと、僕には何の関係もない。僕はただ、父親として沙奈子を受け止めるだけだ。


僕にはそれしかできないんだからね。自分にできることを淡々とする。それが結局は一番の近道なんだと僕はこれまで学んできた。その実感がある。あるからこそ狼狽えずに済んでる。ここで狼狽えて、僕たちの人生をエンターテイメントとして眺めようとしてる人らにカタルシスを提供したいわけでもないし。


沙奈子、君がどんなにショックを受けたんだとしても、僕は君のそばにいるよ。僕の扶養から外れたとしても、まだ養子縁組はしていなくて、法律上は『叔父』と『姪』でしかなくても、僕はもう君の父親なんだ。


そのつもりで僕は君を見守っている。これから先もね。



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