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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百十三 沙奈子編 「正確な情報を」

沙奈子が救急搬送されたことについては、千早ちはやちゃんたちには今は報せないでおこうと思う。だって、はっきりした状況も分からない状況でそれを報せたって不安にさせるだけだろうからね。


まずは家族である僕が確実に対処できるようになってから、正確な情報を伝えるべきだと思うんだ。そのためにも、待つ。


何もできない状態でただ待つのは、つらいよね。不安だよね。『きっと大丈夫』という確信がある僕でさえ、ざわざわしたものが胸の中にあるのが分かる。だったら、千早ちゃんたちはもっと不安になってしまうんじゃないかな。自分が不安だからって他の人まで不安になってもらおうとするのは違うんじゃないかな。


そんな千早ちゃんたちは、沙奈子が山下典膳やまもとてんぜんさんと面会できた記念にということでケーキを焼いてくれてた。画面越しで遠目でも手際の良さが分かる。千早ちゃんの夢に確実に近付いて行ってるのが見える。それもこれも、沙奈子と出逢えたからなんだろうって気がする。


その沙奈子の前に、今さら『実の父親』が現れた……?。


有り得ないとは思いつつ、『人間は変われる』っていう実感があるからこそ、


『もしかしたら』


という疑念が頭をもたげても来る。でもその疑念自体、まったく筋が通ってないっていう実感も、その一方であるんだ。


するとそこに、また玲那から連絡が。


「パパちゃんのお兄さんの名前って、『山下やましたあつむ』だったよね?』


その問い掛けには、もちろん、


「うん。そうだよ」


僕は端的に応えさせてもらった。誤魔化したり曖昧にする理由がないから。本音では耳にしたくもない名前でも、あくまで『情報』としてはただの『記号』だから。それ自体には大した意味はないはずなんだよ。それについて意味を見出してしまうのも人間という生き物なんだろうけど。


事実、僕も、その名前を耳にして、何とも言えない気分になってしまった。眩暈さえ覚えそうになる。僕でさえそうなんだから、沙奈子が過呼吸みたいなことになってもぜんぜんおかしくないんだろうな。


でもそれと同時に、


「自分の父親の顔を、嫌でもよく知ってるはずの沙奈子が、典膳さんを見て『お父さんだ』って断言したのかな?」


確認のために、その場にいたはずの玲那に問い掛ける。すると玲那は、


「うん、はっきりと口にはしてないけど、典膳さんの顔を見た途端に動揺したのが私にも分かったよ。で、山下やましたさんに、『山下萃。それが山下やまもとの本名です』って紹介されて、絵里奈も私もギョッとなったのはホント。パパちゃんのお兄さんの名前だったからね」


だって。



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