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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2509/2601

二千五百九 沙奈子編 「本当のお父さん」

そうして、千早ちはやちゃんたちは人生部としていつも通りの活動をして、僕もいつも通りに仕事をしながら玲緒奈れおなと一緒に過ごしてたら、


「ん…?」


僕のスマホに着信があった。


絵里奈からだった。


『なんだろう?』と思いつつ電話に出ると、


いたるさん…、いたるさん……!。沙奈子ちゃんが……!」


なんだか切迫した声。そのただならぬ様子に、僕の背中にもぞわっとしたものが奔り抜ける。


すると、私物のパソコンの方に玲那からのメッセージ。取り乱してしまってる絵里奈の代わりに、


山下典膳やまもとてんぜんさんと会ったんだけど、もしかすると沙奈子ちゃんの本当のお父さんかもしれない」


って。


……は……?。


『本当のお父さん』


……?。


でも僕は、


『そんなことあるはずない』


と、瞬間的に確信した。だって僕は、あの人のことを、嫌というほどよく知ってるから。あの人は、一つのことに打ち込めるようなタイプの人間じゃないんだ。


アメリカでミュージシャンとしてデビューするとか大言壮語を口にして渡米して、その舌の根も乾かないうちに日本に帰ってくるような人だよ?。ましてや人形なんてものには欠片も興味を持ってない人だったしね。


なにより、山下典膳やまもとてんぜんさんがドール作家として知られ始めた頃にはまだ、沙奈子を連れて女性の家を転々としてたはずだし。


だけど、僕以上にあの人のことを間近で見させられてきた沙奈子が見間違えるかな……?。


そう思うと、


『有り得ない』


と切り捨てることもできなかった。


そして沙奈子は、典膳さんに会ってすぐ、過呼吸を起こして倒れて、救急車で搬送されたそうだ。


ただ、『過呼吸』と聞いて、僕は少しホッとした。僕と引き離されそうになった時に児童相談所で自分の左腕をボールペンで何度も突くような沙奈子だからこそ、過呼吸程度で済んだのならむしろ安心できたんだ。


だから、取り乱すこともなかった。なかったけど、別に『平気』ってわけでもない。


そんな僕に玲那は、


「まあとにかく、今は病院の処置室で安静にしてる。落ち着いた様子で寝てるよ。医師せんせいも『他に異常も見られませんし、今日の夕方まで様子を見て問題なければ大丈夫でしょう』って言ってくれてた」


端的に状況を説明してくれた。香保理かほりさんが亡くなった時にも、パニックを起こした絵里奈を支えてくれたのは玲那だった。過酷すぎる境遇を生き抜いてきたから、こういう時には逆に落ち着いてしまえるのかもしれないな。


玲那にも一緒に行ってもらって本当に良かった。沙奈子と絵里奈だけだとこうはいかなかったかもね。



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