二千五百六 沙奈子編 「誰かをからかう」
玲緒奈はうんちをしてすっきりすると、また自動車のおもちゃで遊び始めた。そんな彼女の気配を感じながら僕は彼女のうんちをトイレに流し、お風呂場でおまるを洗う。
僕にとってはなんの変哲もないいつもの作業。玲緒奈がおしっこやうんちをすることもごくごく当たり前のことで別に不快でも何でもない。『生きてる人間なら当たり前にある生理現象』について、衛生上の問題として気を付ける以上の嫌悪感とかを持つ必要がどこにあるのかが僕には分からない。自分は排泄をしないの?。自分がトイレに行くことをからかわれたりして、嬉しいの?。
僕は嬉しくないと感じるから、自分以外の誰に対しても、必要以上に嫌悪感を向けたり、ましてやからかったり冷やかしたりなんてする気にもなれないけどな。
イチコさんも大希くんも、小学生の頃だってそんなことはしなかったそうだよ。
「うちの小学校じゃ、男子がトイレの個室に入ったってそんなにからかわれたりとかしなかったですけどね。僕も学校のトイレの個室に入ったけど、なんもされませんでしたし」
大希くんはそう言ってた。
「そういや、そうだったね。男子がそんなんでからかったり冷やかしたりしてるの、見た覚えがない」
千早ちゃんもそう言う。でも、
「俺がこっちに来る前にいた小学校じゃ、男子が学校でクソするとか、普通に冷やかされてたけどな」
結人くんが口にすると、
「俺が通ってた小学校でも、割とそういうのはあったな。だから、大の時には教師用のトイレを使うのが許可されてた。職員室からも近いから、いらんことしようとしたらすぐに分かるし」
一真くんも。
だから、沙奈子が通ってた小学校ではそこまでじゃなかっただけで、いまだにそういうのがあったりするのも事実なんだろうな。
でも、どうしてそんな違いができるんだろうね?。地域性?。だけど一真くんが通ってた小学校は、沙奈子が通ってたところと同じ市内の公立小学校なんだけどな。沙奈子が通ってた頃がたまたまそうだったってこと?。
だけどイチコさんも、
「別に学校のトイレの個室に入った男子がからかわれてるとか、見た覚えないなあ」
とは言ってたな。
そういう違いがあるということは、『その違いが生じる原因』は確かにあるはずだし、
『小学生男子なら誰でも学校のトイレで男子が個室を使ったらからかうのが当たり前』
なんていうのもただの『嘘』っていうのが分かるんだけどな。僕だって、小学生の頃にそんなことで誰かをからかうなんて発想すらなかったし。




