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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百九十八 沙奈子編 「そんな関係」

四月三十日。日曜日。曇り。




昨日も、いつものように沙奈子たちは水族館に行ってた。『昭和の日』だったことで、学校の土曜授業もなくて。


あくまで水族館そのものを楽しんでるのは沙奈子と琴美ことみちゃんだけみたいな状態でも、『人生部の活動』としてみんなで出掛けるというのは今でも楽しみにしてくれてる。


ただこれも、きっと高校を卒業すれば全員が一緒にというのは難しくなってくるだろうな。


その頃でも沙奈子が水族館に通うつもりなら玲那も一緒に行ってくれることにはなってる。琴美ちゃんを連れて行くからね。その責任を沙奈子に押し付けるのも申し訳ないし、何より、沙奈子はドレスのデザインの着想を得るために行くんだから、琴美ちゃんを気に掛けてたらその分だけ集中できなくなるし、それは『SANA』にとっても損失になるから、避けるのは当然なんだ。


同時に、ドレスのことを考えてて上の空な沙奈子と一緒に水族館を巡ってても、琴美ちゃんの方もきっとつまらないだろうしね。


千早ちはやちゃんたちが、さすがにもう飽きてきている水族館に毎週のように行ってくれるのは、結局は『沙奈子のため』だから。


沙奈子を応援したいという気持ちを持ってくれているからこそ、そのためだからこそ、なんだ。


しかもそれは決してただの『義務感』じゃないことも、普段の様子を見てれば分かる。『沙奈子と一緒にいる』のが楽しいからこそそうしてくれてるのが分かるんだよ。


僕は決して、沙奈子の相手を千早ちはやちゃんたちに押し付けたいわけじゃない。自分が楽をしたいから、


『友達と遊んどいて』


と言いたいわけじゃない。玲緒奈れおなのこともあるから四六時中相手をしてるのは難しいのは事実でも、だからって親としての責任まで投げ出したいわけじゃない。他人に丸投げしたいわけじゃない。


沙奈子もみんなと一緒にいることを望んでるし、千早ちゃんたちも沙奈子と一緒にいることを望んでくれているからこそ任せられるというのは間違いなくある。


そんな関係、僕自身は高校生の頃には他の誰かと築くことはできなかった。大学の時には鷲崎わしざきさんが積極的に関わろうとしてくれてたけど、僕はそれを迷惑に感じてた。


『僕は一人で生きてられるから放っておいて』


って考えてた。


『一人で生きられるから』なんての自体はただの思い上がりだって今なら分かるけど、だからって一方的に気持ちを押し付けられるのは違うとも思う。それは今でも変わってない。ただ、僕の方に他の誰かの存在を受け止められる余裕が、ほんの少し生まれてるだけなんだ。



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