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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百九十六 沙奈子編 「モンキーパーク」

四月二十八日。金曜日。晴れ。




今日は沙奈子たちが通う高校で『遠足』があったそうだ。高校でも『遠足』って言うんだなって思ったけど、行き先が嵐山の『モンキーパーク』だったからなるほど遠足だなって思った。小学校でも行ったところだしね。


ただ、


「クラスのみんなは、『なんでいまさらモンキーパークなんだよ』と不満たらたらでしたね」


帰ってきてから千早ちはやちゃんが苦笑いを浮かべながら報告してくれた。さらに篠原さんも、


「ほんと、小学校の時にも行ってるから新鮮味とかぜんぜんなくて」


うんうんと頷きながら口にして。だけど、


「でも、私は楽しかったと思う」


沙奈子はそう笑顔を浮かべてて。


沙奈子にとってはそういう何気ないことが楽しいんだろうなって分かる。すると千早ちゃんも、


「うん。私も楽しかったよ。楽しかったんだけどさ、それはみんなと一緒だったから楽しかったってだけで、モンキーパーク自体は、ねえ……」


さらに苦笑いに。


確かに、高校生で猿を見に行って楽しめる人はむしろ少数派かなとは、僕も思ったりする。自分が高校生の頃のことを思い返すと、なおさら。猿なんてそれこそ興味もなかったし。


その一方で、沙奈子みたいに楽しめる子もいていいと思うんだ。特に沙奈子は小さかった頃にはそれこそ『楽しむ』なんて余裕はなかっただろうし。


同時に、


「俺も、猿とかどうでもいいしな」


同じように幼い頃にはそれどころじゃなかった結人ゆうとくんはそう言ってたりも。


ああでも、結人くんの場合は、小学校に上がった頃には鷲崎わしざきさんと一緒に暮らしてたから、その時点ではまだ平穏だったのかな。普段の暮らしそのものは。沙奈子みたいに父親に連れられて女性の家を転々としたり、それこそ『丸一年間小学校に通わせてもらえなかった』みたいなことまではなかったし。


似たような境遇でも、やっぱりそれぞれ違うというのは確かにあるよね。小学校二年の時の遠足では『事件』とかがあっても、それ以外は普通に遠足にも行けてたらしいし。


楽しめてたかどうかは別として。


「まあ俺もさすがに猿見て喜ぶってのはなかったな」


一真くんもやっぱりそういう感想で。かと思うと、


「え~?。僕も沙奈と同じで割と楽しかったけどなあ」


大希ひろきくんみたいな意見も。


彼も、おおむね平穏な人生を送ってきてて、モンキーパークには何度か遠足で行ったことがあるそうだ。だけどそれなりに楽しめて。


やっぱり『人によって感じ方や受け取り方は違う』というのは事実なんだと改めて感じたかな。その事実を無視して人間関係なんて築けるとは思わない。



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