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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百八十 沙奈子編 「力を貸す側に」

四月十二日。水曜日。雨のち晴れ。




沙奈子たちが高校を卒業してそれぞれの道に進むことになったとしても、『人生部』は続けることになると思う。みんなもそれを望んでる。琴美ことみちゃんの居場所としても必要だからね。


かつて沙奈子が山仁やまひとさんのところでお世話になったのと同じ形で。


そういう風に、周囲の協力が、助力が、必要な子供は確かにいるんだ。沙奈子はそれを受けられたからこそ、今がある。僕の力だけじゃこんなに力強く生きられてなかったと思うんだよ。


人間というのは、本当に、自分の力だけで生きるなんてことができる生き物じゃないって思い知らされる。


『自分の力だけで生きられてる!』


なんて考えるのは思い上がりもいいところなんじゃないかな。なにしろ、たとえ原野で自給自足生活をするにしたって、それで使うことになる道具とかは、誰が作ってくれたものなの?。自分が着てる服は誰が作ってくれたものなの?。もうそれだけで『自分の力だけ』じゃないよね。どこかの誰かの力があってこそ、服を着ることもできるし、道具も手に入るし、原野で一人で生きるためのノウハウだって、他の誰かが実際に原野で一人で暮らしてみた経験を基にまとめたものだよね?。


そういう風に、人間は完全に自分一人の力だけでは生きていけない生き物になってしまってるんだと思う。その現実を認めればこそ、いろんなことに感謝できるようにもなるんじゃないかな。


沙奈子も、それを身に染みて実感してると思う。これまで彼女一人の力でどうにかなったことなんてなかったはずだから。


だけどそれを理解できるかどうかというのさえ、誰かに教わらなくちゃできるようにならないかもしれない。まったくの赤の他人がそれを教えてくれるのを期待するのは、『自分の力だけで生きられてる』と言えるのかな。


とにかく僕は、自分が自分だけの力で生きてこられたなんてまったく思わないし、沙奈子を育ててきたことさえ、僕一人の力でできたことだとは思わない。


児童相談所の相談員の塚崎さんや学校の先生や山仁やまひとさんをはじめとしたたくさんの人の力を借りて育ててきたんだよ。それは間違いないんだ。


僕一人の力でできたことだなんて、思い上がることはできない。


だからこそ、今度は僕が、一真かずまくんや琴美ことみちゃんが生きていくために力を貸す側になりたいと思えるんだ。そしてそんな僕の姿を、沙奈子や玲緒奈れおなに対して手本として示していく。そうすることで沙奈子も玲緒奈も学んでいける。自分がどうやって生きていけてるのかを学ぶことができると思うんだ。



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