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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百七十九 沙奈子編 「たとえ違う道に」

四月十一日。火曜日。晴れ。




「行ってきます」


高校ニ年生になって改めて制服に身を包んだ沙奈子が、僕と玲緒奈れおなに見送られて、『いってきますのキス』と『いってらっしゃいのキス』を交わして、リビングを出ていく。それから一階に降りて千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんと一緒に学校に向かう。


これまでもずっと繰り返してきた日常の光景を改めて始める。


だけどこれも、あと数年で、早ければ高校卒業と同時に終わるんだろうな。イチコさんたちがそれぞれ違う進路を選んで、それで毎日は顔を合わせることがなくなったみたいに。


もちろん、付き合いそのものは今も変わらず続いてるけど、高校生までのとは違った形になってるのも事実なんだ。特に星谷ひかりたにさんは、もう数ヶ月の間、イチコさんや田上たのうえさんや波多野さん全員と同時に顔を合わせてない。ビデオ通話とかで画面越しには顔を合わせて話もしてても、実際にはね。


イチコさんと田上さんは『SANA』に勤めることになって、その点ではこれまで通りに顔を合わせることはできるかな。


沙奈子は、洋裁の技術を専門的に学べる学校に進むことになるとして、千早ちゃんは、高校卒業と同時にケーキ屋を始めたいと思ってたのが、いったんパティシエの学校に通ってしっかりと技術を学んでからにしようかと思い始めてるみたいだし、大希くんはボランティアに力を入れられる大学に通いたいと思ってるみたいだし、結人くんは家具職人としての技術を学ぶことを考えてるみたいだ。


だから間違いなく、それぞれ違う道に進むことになるだろうな。


でも、たとえ違う道に進んでも、ここに集まってくれたらいいと思ってる。毎日は無理でも、たまにはね。なにより、琴美ことみちゃんの居場所としてはまだまだこれからも必要だから、


「人生部自体はこれからもずっと続ければいいじゃん。学校の部活とは違うんだし、『卒業したらさようなら』しなきゃなんないものでもないっしょ」


千早ちゃんも言ってくれてる。もちろん僕もそれには賛成だ。


「うん。それでいいと思う」


沙奈子が言うと、


「僕もそうしたいな」


大希くんが口にして、


「俺も反対する理由はねーよ」


結人くんもぶっきらぼうな感じだけど賛同してくれる。


「私も、またここに集まりたい」


そして篠原さんも。すると一真かずまくんは、


「ありがとう。琴美のことを考えたらいろいろ不安もあったけど、ここが続いてくれるんなら、安心だ」


ホッとしたように笑顔になって、


「よかったな、琴美」


と声を掛けると、結人くんの膝に座った琴美ちゃんが、


「……うん……」


だって。



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