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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百七十五 沙奈子編 「何を守っている」

四月七日。金曜日。雨。




今週、沙奈子は朝から『SANA』に出勤して、夜の七時頃に絵里奈や玲那と一緒に帰ってくるという毎日を過ごした。それは、いずれ学校を卒業して社会人として働くことについての『予行演習』でもあった。


「ちょっと疲れるね」


それが沙奈子の正直な感想だった。別に何か力仕事とかをするわけじゃなくて、山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーの山下やましたさんと打ち合わせしたりとか、沙奈子のドレスを基にした量産品の監修とか、基本的には事務所内で席に座ったままの作業が多かったけど、やっぱり学校や人生部の活動とはまた違う気の遣い方をすることで、気疲れしてしまうんだろうな。


だからこそ、家に帰ってきたら、


「お疲れ様」


と、ちゃんと労うんだ。


『仕事なんてそんなもの』


『疲れるのが当たり前』


『だから労う必要なんてない』


じゃなくて、その働きによって『SANA』という企業が成り立ってるんだっていう事実を理解すればこそ、『当たり前のことなんだから労う必要なんてない』とか考えずに、しっかりと労わなきゃと僕は思ってる。


これは、イチコさんや田上たのうえさんに対してもそう。晴れて正社員になったとはいえ、二人はあくまで事務職の平社員。確かに、


『イチコさんや田上さんじゃないと駄目』


という仕事をしてるわけじゃない。同じ仕事ができる人は他にもいくらでもいるかもしれない。だけどその仕事をしてくれる人がいなくちゃ、やっぱり『SANA』は成り立たないんだよ。それもまたれっきとした事実のはずなんだ。


だとしたら、理不尽な接し方をするとか、ましてやパワハラをするとか、


『たかが事務職の平社員風情が』


とか言って見下すなんて、筋が通らないよ。沙奈子は僕の家族だからその分だけ労い方も変わってくるとしても、イチコさんや田上さんを労わなくていい理由にはならない。


「従業員を労わないことで人が集まらず、それがゆえに倒産するような企業については、私はむしろ淘汰されるべきだと思います。そこで『企業が破綻すれば従業員の生活が守れない』とおっしゃるような方については、『従業員を労わないような企業が従業員の何を守っているのですか?』と私は考えずにいられません」


星谷さんはそう言って、二人に対してとても感謝してるんだよ。だからこそ二人も、頑張れるんだと思う。そんな二人でも、『ついうっかり』ということはある。そんな時には、絵里奈もついかッとしてしまいそうになるけど、感情任せに叱ったって問題が解決するわけじゃないっていうのは分かってるんだ。



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