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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百七十四 沙奈子編 「負けてらんない」

四月六日。木曜日。曇り時々雨。




「沙奈がいないのはちょっと寂しいけど、私たちも沙奈に負けてらんないよね」


沙奈子が絵里奈や玲那と一緒に『SANA』に出勤するようになって、千早ちはやちゃんがそんなことを口にした。すると、


「だよね。僕もそう思う」


大希ひろきくんもそう言って、


「俺は最初はなから負けるつもりなんてねーよ」


結人ゆうとくんがそっぽを向きながらも表明して、


「俺もだ」


一真くんが賛同し、


「私も頑張らなくちゃと思います」


篠原さんが続いた。


そんな前向きな感じだけど、そこにあるのは自然な本人の気持ちだと思う。なんとなくそういう雰囲気とか空気感に流されるみたいなのじゃなくて。


世の中には洗脳みたいな形で前向きな考え方をさせようとするのがあったりするけど、僕たちは決してそんなのは望んでいないんだ。あくまで自分の人生を生きるのは本人なんだから。


野生の動物は本能に縛られてるかもしれなくても、だけどそれはやっぱり自身の中から湧き上がる衝動であって、『誰かに言われて』じゃないよね。だったらそれは、『当人の気持ち』と何が違うの?。


人間だって、自分自身の気持ちさえ、実は完全には理解できてなかったりするんじゃないかな。それは本能に従ってる動物のそれと何が違うのかな?。


『結婚なんかしたくない』


『子供なんか要らない』


と考えてしまう感じてしまうのも、もしかすると、あまりにも人間という種が増えすぎてしまってるからこそ発現してる本能の仕業かもしれないよ?。もちろん違うかもしれないけど、『違うということを証明できてもいない』よね。


『人間は他の動物とは違う』


と言いながら、『動物としての本能』というものを都合よく詭弁として利用しようとしてたり、本当に情けないことをしてるという実感しかない。『大人』なんて言ってみたってその程度なんだよ。その程度の存在なんだ。


だからこそ、他の誰かの考え方を洗脳みたいな形で誘導することに対しては強い違和感、ううん、はっきり言って『気持ち悪さ』を感じるし、自分はそんなやり方をしたいとは思わないんだよ。


千早ちゃんたちが沙奈子に負けてられないと前向きな気持ちを口にしてくれるのを美談のように感じる人もいるかもしれないけど、でも僕は、それはあくまで千早ちゃんたち自身の気持ちそのものの言葉でなきゃ、素直に喜べないと感じてる。彼女たちにそんな風に言わせるために僕が誘導してたら、意味がないんだ。


だけど、千早ちゃんたちは、それぞれ自分の生き方というものを考えてくれていて、その上で『負けてられない』と思ってくれてるのなら、嬉しいよ。



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