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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百七十三 沙奈子編 「遠慮が出てきて」

四月五日。水曜日。曇り時々雨。




沙奈子が『SANA』に出勤するようになっても、『人生部』の活動はこれまで通りある。


「沙奈子さんがいないのに俺と琴美ことみが来ていいんですか?」


朝、琴美ちゃんと一緒に自転車でやってきた一真かずまくんが、申し訳なさそうに体を小さくしながらそう聞いてきた。


いくら『人生部の活動』という名目があっても、彼にとってはやっぱり『友達の家に訪ねていく』って感覚そのものはどうしても残ってるんだろうな。そうなると沙奈子もいないのに家に上がり込むことについて遠慮が出てきてしまうんだと思う。


だから僕は、改めて彼に、


「これはあくまで人生への活動という、ある意味では塾みたいなものだから、遠慮は要らないよ。塾に行くのに遠慮はしないよね。それと同じことだと思えばいい」


と告げたんだ。


すると彼は、


「ありがとうございます」


深々と頭を下げてくれた。両親の振る舞いからはとても想像できない生真面目さだと思う。こういうこともあるから、


『親がどんなでも子供が立派な人間に育つことはある』


みたいに言われるんだろうな。


だけど僕はやっぱり、それは単に本人の資質だけの問題じゃなくて、


『どんな人と関われてどんな影響を受けるか?』


というのが大きいと感じるんだよ。彼の場合は、近所の人たちがとてもいい影響を与えてくれたんだと思う。それについて考えずに彼自身の資質だけで語るのは、彼と琴美ちゃんの力になってくれていたその人たちの努力を蔑ろにすることなんじゃないかな。


僕はそういうのは好ましいことじゃないと思うんだけどな。


それでも、そういう一真くんだからこそ、人生部の部員としてうちに通うことについても抵抗がないというのは間違いなくある。もし、彼の両親と同じようなタイプだったら、関わりたいとは思えない。そもそも、沙奈子も親しくしようとは思わなかったはず。


今の状況は、一真くん自身が手繰り寄せたものでもあるのは事実なんじゃないかな。そしてそんな一真くんを作り上げてきたのは、彼と琴美ことみちゃんと見捨てなかった周囲の人たちなんだろうな。


彼の姿を見てると、より一層、その想いが強くなる。親を反面教師にするにしても、『それができる状況』が必要なんだ。そしてそれは、本人の力だけじゃたぶん無理。他に手本になる存在も周りにいない状態で親とまったく違うタイプに育つなんて、現実的とは思えないよ。漫画やアニメのキャラクターならそういうのもいるとしても、現実は漫画やアニメじゃないからね。



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