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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百六十九 沙奈子編 「赤ん坊がようやく」

四月一日。土曜日。晴れ。




いよいよ新年度。沙奈子たちも二年生に進級するし、イチコさんと田上たのうえさんが正式に『SANA』の正社員になる。


「月曜日に、簡単だけど入社式を予定してます」


絵里奈が言うように、月曜日にはイチコさんと田上さんの入社式が『SANA』で行われることになってるそうだ。


「まあ、ずっと顔を合わせてきたし、一緒に働いてきたから、いまさらだけどね。取り敢えずケジメってことかな」


玲那も、そんな風に言いながらも嬉しそうだ。


確かに、『SANA』の創立メンバーでもあるからそれこそいまさらのようにも思えるけど、こういうのはある意味じゃ『気持ちの上での区切り』でもあるだろうからね。それなりに意味はあるんだろうなと僕も思う。


さらに絵里奈は、


「沙奈子ちゃんも、ゴールデンウィーク明けには正社員になります。彼女は二人とは立場が違うのもあって、扱いが別になりますけど」


とも。


そうだよね。沙奈子の場合は、一般の職員としてじゃなくてデザイナーとしてのそれだからというのもあるみたいだし。


それでも対外的には、『一般社員』だけど。


「当面の間は、まだ私が『デザイナーSANA』ということになります」


改めて絵里奈が言ったように、今の時点では『デザイナーSANAの正体は秘密』ということになっていて、何かの形で『本人』が対応しないといけない時には絵里奈が対応することになるんだ。一応、『マネージャー』的な存在としても絵里奈が表に出ることにはなっていつつ、どうしてもという場合はね。


だけど幸いにもここまではそんなことにはなってない。それでも沙奈子が自分で対処できるようになるまではきっとまだまだ時間がかかるだろうから、そこまでは。


何度も言うけど、彼女は生まれてからずっと大変な境遇にいたんだ。それを思えば、僕のところに来てからでさえようやく七年になろうとしてるところでしかない。


七年って、それなりの時間のようにも感じるかもしれなくても、赤ん坊がようやく七歳の子供になる程度の時間でもあるんだよ。それを思えばまだまだゆっくり時間をかけていいって感じる。


沙奈子の人生はスタートが大幅に遅れたんだ。普通にスタートできた人とはぜんぜん条件が違う。同じ条件で生きていけなんて言われても、それはただの理不尽なんじゃないかな。


少なくとも僕は、あの子の親として、そんな無理難題を言う気にはなれないよ。


何より、僕自身が、あの子にそんなことを強いるような自分でいるなんてのは許せない。



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