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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百六十五 沙奈子編 「言う必要のない」

三月二十八日。火曜日。晴れ。




もうすぐ三月も終わりで、四月から次の年度が始まる。当然、『SANA』も企業として新年度と迎えるわけだ。


その中で、イチコさんと田上たのうえさんについては、正式に『フルタイム勤務の正社員』として迎えることになった。


これに対して山仁やまひとさんは、


「いいところに決まってよかったね」


と言ってくれたけど、田上さんの母親は、


「そんなワケの分からないみみっちいところに就職させるために高い学費を払ってきたんじゃないのに」


って言ってきたそうだ。


「ホントにネチネチネチネチ、『あんたは嫌味を言うために生きてんのか!?』って思うほどスムーズに嫌味が出てくるんですよね、あの人」


四月からのことについて絵里奈とビデオ通話で話している時に、田上さんは心底忌々し気にそう言った。これには絵里奈も、


「私の実の母親もその感じだったから、気持ちは想像できるよ」


と苦笑い。すると玲那も、


「前の会社にもいたよ。そういう人」


って言いだして、


「ああ…、いたね」


絵里奈もいっそう苦笑いに。


「その人は、一度は定年で退職したんだけどさ、ずっと現場を仕切ってきたから一番よく分かってて、だから嘱託職員としてそのまま働いてたんだけど、他人にはそれこそあれこれ口出ししてくんのに、自分がミスしても絶対に謝んないの。返事すらしなくてパパッと手直ししてそれでおしまい。それなのに他の人がミスしたらくどくどくどくど嫌味並べてお説教なんだよ。だからみんなに嫌われてた」


そう言う玲那に、絵里奈も困ったような表情で続く。


「だったね。まああの人としては、まだまだ会社ってのが今よりもっと男性中心だった頃からそれに負けじと頑張ってきたからそういう自負があってのことなのかもしれないけど、ミスを認めて謝ったりしたら『だから女はお茶くみだけしてればいいんだ』的なことを言われたりしたから『謝らない』っていうクセがついちゃったのかもしれないけど、それは本人の事情であって、周りの人からすれば関係ないからね」


すると田上さんが、


「うちの母親やそういう人が、高齢者施設で職員に対して横柄な態度をとる入所者になったりするんでしょうね」


だって。


「あ~、想像できる……」


「必ずそうなるとは限らなくても、そんな気はしてしまうよね」


玲那も絵里奈も、思わずそんな風に。


だけどもしそれが本当なら、職場でのストレスが結局、高齢者施設での入所者の振る舞いを作っていったって考えることもできそうだよね。


こう言うとまた、


『他人の所為にするな!』


って言うかもだけど、職場で別に言う必要のない嫌味とか口にするのは、『他人の所為にしてる』以外の何なのかな。



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