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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百五十八 沙奈子編 「ある程度の妥協は」

三月二十一日。火曜日。曇り。




『多様性を受け入れろと言うのなら、『多様性を受け入れたくない』という多様性も認めろ』という理屈は、本当にただの詭弁だと思う。それは『多様性を認めることでしか成立しない』ことだからね。


僕は、自分たちがとにかく『普通じゃない』ことを自覚してるから、そもそも『多様性』というものを認めないと自分たちの存在自体が危うくなると自覚してるから、多様性というもの自体が生き物においては本来なら当たり前なんだっていう実感があるんだよ。


でも同時に、


『すべての人の事情をすべて同時に完全に受け入れることは現実問題として現時点では不可能』


だと思うから、結局はある程度の妥協は必要なんだろうなって感じてる。


『沙奈子が、誰に対しても分かりやすく自分の気持ちや感情を表現することができないという事情』


についても、『すべての人に完全に理解してもらう』『そういう事情に配慮してもらう』というのは確かに現実的じゃないからね。玲那のことだって、『前科者』という事情について何も問題なくいられるかと言えば、きっと無理だろうな。なにしろ、イチコさんや大希ひろきくんが『元死刑囚の孫』だというのも、気楽に口にできることじゃないのも現実だし。


『七人殺しの役童』とイチコさんや大希くんは、いくら血が繋がっていたって『別の人』『他の人』という意味では『別人』であって『他人』だし、なにより二人が生まれるずっと以前にこの世を去ってるんだから、『血が繋がってる』という点以外で、祖父本人から受けた影響なんてないに等しいはずなんだ。山仁やまひとさんが、実の父親である『七人殺しの役童』から受けた影響を徹底的に排除しようと努力もしてきたから。


なのに世間は、二人のことを『死刑囚の血縁者』として色眼鏡で見ようとするのは間違いない。それこそ『同情』でさえ、事実上の色眼鏡だからね。しかも、それを言うと、『同情してやってんのに!』とキレたりするんだよね?。同情しながらも自分の思い通りになってくれないと攻撃するんだから、そこにあるのは、『可哀想な人に同情できる自分が好き』という自己愛だけじゃないの?。


そんな現実がある以上は、『すべての人の事情をすべて同時に完全に受け入れることは事実上無理』だって僕も思うんだよ。『多様性を認めろ!』『少数派の意見にも耳を傾けろ!』と大きな声を上げる人たちが実は攻撃的だったりするのは、『多様性を受け入れてない』からのはずだしね。


こう言うとまた攻撃的になるのかもしれないけど。



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