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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百五十三 沙奈子編 「聖人とまで」

三月十六日。木曜日。晴れ。




今日も一番に来たのは一真かずまくん。やっぱり琴美ことみちゃんを学校に送ってからそのまま来たんだ。


実は、沙奈子たちが通ってた小学校もそうだったんだけど、本当は『八時前の登校は原則禁止』ってことになってる。


『八時前に登校しようとすると集団登校とは別に登校することになるから』


というのもあるらしい。でも、学校行事とかで八時前に登校することだって当然あるし、他にも事情があれば許可されるみたいだね。


そして琴美ちゃんの場合は、


『家にいられない。いたくないという事情』


を学校側も把握してて、許可されてるそうだ。


子供が『自分の家にいたくない』というのは、本当に悲しいことだよね。千早ちはやちゃんもそうだった。だから沙奈子と一緒に夜まで大希ひろきくんの家にいて、ほとんど山仁やまひとさんの子供みたいにして過ごしてた。だからこそ救われた面もすごく大きいと思う。それと同じことを、僕たちは今、しようと考えてるんだ。自分がしてもらったことを、こうしてやろうとしてるんだよ。


いの一番に現れた一真くんに、沙奈子は朝食をふるまう。彼が自宅で作ってる分だけだと、彼には足りないから。


「ありがとう。感謝してる」


大きな体を小さく折りたたむみたいにして彼は頭を下げる。その姿が何とも愛嬌があるようにも見える。


彼は別に愛想よくしようと愛嬌をふりまこうとしてるわけじゃないんだろうけど、自然とそうなってしまうんだ。そんな彼に対しても沙奈子は、


「ううん。私もしてもらったことだから」


そう言って微笑んだ。そうやって『自分もしてもらったことだから』と考えて同じことをできるようになるというのは本当に大変な成長だと思う。成長できてなかったらたぶん、いつまでも『してもらう側』でいようとするんじゃないかな。だけどそれは難しいと思う。人間はいつまでも『一方的に施す側』でいることはできないと思うから。


僕だってただただ何の見返りもなく施し続けることなんてできる気がしない。


一真くんや琴美ちゃんのことだって、沙奈子と親しくしてくれて、それで彼の方も沙奈子の力になろうとしてくれてるのがあるから、そういうメリットもちゃんとあるからできてるっていうのは間違いなくあるんだよ。僕は聖人とかじゃないからね。


むしろ、聖人じゃないからこそ成長できるっていうのもある気がする。聖人とまで言われる人って、それ以上は成長しようがない気がするんだ。だって成長しきってるからこそ聖人なんだろうし。


僕にはまったく想像もつかない世界だけど。



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