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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百五十二 沙奈子編 「それと同じか」

三月十五日。水曜日。晴れ。




沙奈子たちが通う学校は、今日から金曜日まで自宅学習。


だから朝から人生部の部室に集まってる。


一番に来たのは一真かずまくん。琴美ことみちゃんを学校に送ったらそのままうちに来た形だ。両親の食事については、朝と昼の分は作って冷蔵庫に入れてあるって。二人とも昼近くまで寝てるから。


そんな家には一真くんも琴美ちゃんもいたくなくて、琴美ちゃんも早々に学校に向かうし、一真くんは自転車でうちに来てみんなと合流して改めて高校に向かう。


それをずっと続けてる。高校とはぜんぜん方向が違うのに、手間が掛かるのに、


『その手間を掛けてでも家にはいたくない』


ということで。


だから、うちで改めて朝食を食べていくこともある。沙奈子が用意した朝食をね。自宅で琴美ちゃんのために用意した朝食と同じものじゃ、体の大きな彼には物足りなくて。


「本当にすいません」


一真くんはことあるごとにそう言って恐縮するけど、僕だって沙奈子のことで山仁やまひとさんにすごくお世話になったんだから、『今度は僕の番』と思ってるだけだし、


「いいよいいよ。気にしないで」


と言わせてもらってる。沙奈子も、


「私、料理とかも好きだから」


笑顔で言ってた。いつものように『沙奈子のことをよく知らない人にはたぶん分からない笑顔』だけど。一真くんも最初はそんな沙奈子に戸惑ったりもしつつ、


「琴美も表情が硬いから、それと同じか」


って気付いたら慣れたみたいだ。そう一真くんが言うとおり、琴美ちゃんも表情が硬い。あまり表情が変わらないんだ。事情を知らない人だと、


『愛想の悪い子供』


って感じで不快に思うかもしれないにしても、沙奈子は『自分と同じ』とすぐに気付いて受け入れてくれてた。琴美ちゃんが挨拶とかしなくてもお礼とかしなくても、気にしてない。


それに、琴美ちゃんは本当に挨拶やお礼をしないわけじゃないんだ。やっぱりよく知らない人には分かりにくいけど、小さく頷いたり視線を動かしたりして反応はしてるんだよ。それが一般的に思われてる『挨拶』や『お礼』とは違ってるっていうだけで。


「猫とかの挨拶も、人間には分かりにくいって言うよね」


沙奈子はそう言って琴美ちゃんのことを理解してくれたんだよ。何より、沙奈子自身が挨拶とか下手だから、自分がそんななのに琴美ちゃんが上手くできないからってそれに対して怒ったりするのは違うと思ってくれてるんだ。


自分のことを棚に上げて他の人に対してあれこれ言うのとかも、信頼されないよね。沙奈子はそれもちゃんとわきまえてくれてる。普段の彼女の様子を見てると分かるんだ。



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