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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百四十六 沙奈子編 「結局ここまで」

三月九日。木曜日。晴れ。




昨日は、沙奈子たちの通う学校で中期選抜の試験があったから、自宅学習だった。当然、みんなで『人生部の部室』に集まってのいつも通りの活動だ。


そんな彼女たちの様子を、やっぱりいつも通り、ビデオ通話、じゃなくて今は『マルチディスプレイでカメラ映像と音声を表示してる』だけなのか。だから当然、ビデオ通話よりも映像がスムーズだ。普通にカメラ映像と音声を表示してるのと同じだからね。わざわざ同じ家の中でビデオ通話を使う意味もないと思って、ネット通販で二十メートルのHDMLケーブルを買って、一階と二階と三階とで同じ画面を表示できるようにしたんだよ。それぞれの階にそれ用のノートパソコンが複数台ずつ必要になったりしたけど、これについては、古くなって性能的に厳しくなったものを再利用してる。


『画面のキャスト』というのも試したけど、こっちはビデオ通話とそんなに大差ない感じだったから、やっぱりなんだかんだ言っても有線で繋ぐのが一番確実なんだなと思わされたり。


と、それは別にただの余談でしかなくて、スムーズで高画質な映像のおかげで、より一層、沙奈子たちの様子が、それこそ、


『隣の部屋が見えている』


感じで伝わってくるようになった。おかげで話しもしやすい。その中で、


「大人が無責任なことしてんのに世の中がよくなるとか、そんなわけないじゃん」


千早ちはやちゃんが不愉快そうにそう言った。ニュースとかを見ていろいろ思うところがあったみたいだ。それに彼女の場合は、母親が、結局ここまで、彼女が覚えている範囲では一度も学校に顔を出してないのもあって、そのことに対する不満もあるんだろうな。なにしろ、


「あの人、小父さんが私のことを見てくれるのをいいことに、全部任せっきりなんだよ?。親として有り得ないでしょ。学校で小父さんが私の親代わりってことで通っちゃってるのがもうおかしいよ。小父さんは私の親戚でさえないんだよ?。沙奈のお父さんはちゃんと親戚としての『叔父さん』だけど、山仁やまひとの小父さんはそうじゃないからね?。なんで自分の子供のことを赤の他人の善意に丸投げしてしまえんのか、理解できない。あんな人でも『大人』なんだよね。びっくりだよ」


って、本当に実感を込めて語るからね。


だけど、『他人の気持ちが分かる人になりなさい』『他人の痛みが分かる人になりなさい』っていうのが本当に通るなら、千早ちゃんの母親のしてることさえ、


『人それぞれ事情がある』


ということで、『その気持ちや痛みを分かる人になりなさい』って話になってしまうんだろうな。なのに、千早ちゃんの気持ちや痛みについては分かろうとしないんだ。



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