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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百四十一 沙奈子編 「立っている場所が」

三月四日。土曜日。晴れ。




鉄道での人身事故が相次いでる。『人身事故』とは表現されてるけど、実際には『故意に列車に接触した』というのが本当のところらしい。


これについて、


「どうして他人の迷惑とか考えられないんだろ」


と篠原さんは口にしたけど、それに対して千早ちはやちゃんは、


「まあ、そう感じる人もいるよね」


って苦笑い。すると結人ゆうとくんが、


「けどよ、ヒロが中学ん時に登校中に行方をくらましたのだって、教師とか山仁やまひとの小父さんとかがヒロを探して右往左往したんだし、相当迷惑だったはずだぜ?」


って口にした。これには今度は大希ひろきくんが苦笑い。


「うん。あれは申し訳なかったと思う」


そして結人くんはそんな大希くんを見て、


「でもお前は、わざと迷惑掛けようと思ってそんなことしたんじゃねーだろ?。そん時はなんか分かんねえけどそんな風にしちまったんだろ?。電車に飛び込んだりするのとかも、中にゃわざと迷惑を掛けてやろうと思ってって奴もいるかもしんねえけど、そうじゃない奴は、なんとなくそうしちまっただけだろ?。やった瞬間には他に頭が働かなかったんだよな?。それがたまたま取り返しのつかねえことになっちまったってだけでよ。な?。ヒロ』


と語ってみせる。これには沙奈子も大希くんに視線を向けた。それを受けて大希くんも、


「結人の言うとおりだよ。あの時の僕はどうかしてた。たまたま無事だったから今はこうしてられるけど、もしものことがあったら、電車に飛び込んだ人たちと同じになってたよね」


真剣な表情で応えて。その上で、


「僕はたくさんの人を助けられるようになりたいと思ってるんだ。それはもちろん、電車に飛び込んでしまわずにいられなくなった人もだよ。亡くなってしまったらもう命は助けられないけど、だからってそれをやたら責めるようなこともしたくない。僕が無事だったのはたまたまだったって分かるからさ」


とも。


「……」


自分が想いを寄せている大希くんの言葉に、篠原さんは黙り込んでしまった。そういうところからも、彼女はまだまだ大希くんのことをぜんぜん理解できてないんだろうなって分かる。彼に近付けてないのが分かる。大希くんが『七人殺しの役童えきどうの孫』という事実を知ってもなお想い続けていられてる星谷ひかりたにさんとは、立っている場所がまるで違うんだって分かってしまうんだよ。


残念だけど。


そんなやり取りを見ていた一真かずまくんが、


「でもまあ、無関係な他人には分からないってのも確かにあるよな……」


と呟くように言った。



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