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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百三十七 沙奈子編 「迎合することを」

二月二十八日。火曜日。晴れ。




『誠意』とか『気遣い』とか『相手を敬う』とか『人に優しく』とか、僕も言葉としては何度も使ってきた。だけどそれだけで確実に伝わるという実感はまったくないんだ。


「漫画とかアニメとかでも、そういう言葉ってよく使われるよね。てか、まさしくそれがテーマと言うか、『誠実に話し合えば戦争さえ止められる』的な内容のも少なくないと思うよ。でもさ、それを見て育った世代が、ホントに『誠意』とか『気遣い』とか『相手を敬う』とか『人に優しく』とかをそこまで実践できてるかなあ?。そんな印象、あんまりないんだけど?」


玲那がしみじみそう口にした。僕も、


「確かに」


と思ってしまう。すると沙奈子も、


「うん。漫画とかアニメとかだと、『誠意』とか『気遣い』とか『相手を敬う』とか『人に優しく』とかで戦いをとめられたりしてるのがあった」


って。だけどそれを言ってる彼女の表情は、『苦笑い』って印象だった。他の人にはよく分からないとしても、僕にはそれが分かってしまう。千早ちはやちゃんや大希ひろきくんと一緒に漫画やアニメを見ていた時の正直な感想なんだろうな。


だからって、玲那や沙奈子が、漫画やアニメを馬鹿にしてるってわけじゃないのも伝わってくる。玲那はそれこそ漫画やアニメが大好きだから貶す意図がないのは当然だし、漫画やアニメ自体にはそれほど興味も持ててない沙奈子も、自分が好きってわけじゃないからって軽んじるつもりもないんだよ。ただあくまで『そういうもの』として語ってるだけなんだ。


そして僕はそこにこそ『誠意』とか『気遣い』とか『相手を敬う』とか『人に優しく』というものを感じる。自分の好みに合わないもの好きじゃないものについても貶したり軽んじたりしないというのは、『誠意』や『気遣い』や『相手を敬う』や『人に優しく』的なのがあってこそだと感じるし。


同時に、自分の好みに合わないものや好きじゃないものについて、『好き』とか『面白い』と嘘を吐くのも、それは決して『誠意』じゃないと思う。面と向かってざまに『くだらない!』とか言ってしまうのは『気遣い』じゃなくても、だからって本当は好きでもないし面白いと思ってもないのを、相手に迎合して『好き』とか『面白い』と言ってしまうのも違うはずなんだ。


なにより、そんな風に『嘘を吐かなきゃいけないような状況を作ってしまっている』のは、『誠意』とか『気遣い』とか『相手を敬う』とか『人に優しく』なんていうのとは程遠いと感じるんだよ。そうやって相手に迎合することを強要するようなのはね。



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