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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2425/2601

二千四百二十五 沙奈子編 「素地はある」

二月十六日。木曜日。曇り。




今日は、沙奈子たちが通う高校での前期試験があって、在校生は自宅学習だった。


もっとも、沙奈子たちの様子はいつもと何も変わらない。『人生部』としてみんなで集まって、星谷ひかりたにさんが用意してくれた課題を基に自主勉強をしたり、『店舗経営のシミュレーション』として部室の掃除と消毒をしたり、それ以外は各々好きなことをして過ごしてた。


その中で、沙奈子は当然、ドールのドレス作りをこなしてる。他の人にとってはどうしてそこまで夢中になってやれるのか分からないかもしれないけど、彼女にとっては確かに『夢中になれること』なんだよ。時間を忘れて打ち込めることなんだ。それをしてる時の沙奈子は、とても真剣で、でも同時に穏やかさも感じられて、心底楽しみながらやってるんだなっていうのが見てても分かる。しかも、本人なりに納得の出来の時には本当に嬉しそうで。


そんな彼女のことを、千早ちはやちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんも一真かずまくんも篠原さんも、揶揄したりしない。彼女の好きなものを否定したり貶したりしないんだ。だから沙奈子も、千早ちゃんが店舗経営のシミュレーションとしてあれこれすることについて揶揄しないし、大希くんがサンドボックスゲームに夢中になってても揶揄しないし、結人くんがドール用の家具作りに取り組んででも揶揄しないし、一真くんや琴美ことみちゃんや篠原さんがゲームに熱中してても揶揄しないんだ。


沙奈子は元々、他の誰かを揶揄するようなことを積極的にしないタイプなのはあるにしても、そういうのをその場のノリで当たり前のこととしてそれこそ『楽しみ』として誰かを揶揄し貶し蔑み嘲笑うという振る舞いをしてきた僕の兄を父親として間近で見てきてるから、実はそういうことをしてしまう素地はあるんだろうなと思ってる。たまたましないでいられてるだけなんだろうな。そして、そういうことをしないでいられる環境を僕たちが作れていることを誇りたい。


僕の兄でもある実の父親と交際相手の女性の振る舞いを目の当たりにしてきてそれを『嫌だ』と感じてきたから沙奈子自身は避けようと心掛けてくれてても、僕たちまで同じようにしてたら、沙奈子だって結局は『そういうもの』と考えるようになってしまう可能性が高いしね。


ネットとかで誰かを嘲ってる人たちも、自分の周りの人がそうしてるから、『自分もやっていい』『そうするのが当然』だと思ってるんじゃないの?。


僕はそれを『当然のこと』だと思ってもらいたくないんだ。だからやらないように心掛けてる。



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