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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2422/2601

二千四百二十二 沙奈子編 「起きるのが嫌じゃ」

二月十三日。月曜日。雨。




今週の木曜日は、沙奈子たちが通う高校で前期試験がある。だからその日は自宅学習だ。だけど沙奈子にはそういうのもまったく関係ないみたいで、ただただ淡々と毎日を過ごしてる。


朝、起きるとまず洗面所で口をゆすいで、絵里奈と一緒に一階の厨房に下りて朝食の用意を始める。でもこの時にはもう、玲緒奈れおなは起きてて、僕は彼女を膝に抱いて仕事を始めてた。なにしろ玲緒奈は、外が明るくなってくると目を覚まして、お気に入りの自動車の玩具を手に、『僕を使って』遊び始めるから、寝てられないんだよ。僕が起きないとなると絵里奈や玲那や沙奈子で遊ぼうとするし。


だけどこれはイチコさんや大希ひろきくんが小さかった頃と同じなんだって。


『寝てるのなんてもったいない!。遊ばなきゃ!』


とばかりにね。だからそれだけ自分がこうして生きてることを楽しんでくれてるんだって感じる。


そんな玲緒奈とは逆に、子供の頃の僕は起きるのが嫌だった。本当はずっと寝ていたいと思ってた。ううん、それどころかもう二度と目なんか覚めないでほしいと思ってた。目を覚ますと嫌なことばかりだから。大人になってからもそれは基本的には変わらなくて、単に義務感から起きられるようになっただけだ。


沙奈子が僕の部屋に捨てられた頃も、最初はただ義務感から起きるようにしてただけだと思う。


でも、彼女が落ち着いてきたと感じた辺りからかな。なんとなく起きるのが嫌じゃなくなってきたのは。沙奈子の顔を見るのが、沙奈子と顔を合わすのが、なんだか楽しみになってきたことで、すんなり起きられるようになった気がする。


そしてそれは沙奈子も同じだったみたいで。


絵里奈も、玲那も、同じだって。みんなの顔を見るのが楽しみだから、顔を合わせたいから、言葉を交わしたいから、起きるんだ。起きられるんだ。


そういうのは間違いなくある。


起きるのは玲那が一番遅いけど、それでも目覚ましのアラームよりは早く起きてくる。起きて布団を片付けてくれる。沙奈子と絵里奈が朝食の用意を、僕が玲緒奈の相手をしながら仕事を始めてるし、みんな起きてから布団を片付けるのが玲那の役目みたいになってるね。それからまず三階の掃除をするんだ。今はそういう手順になってる。


で、用意ができるとみんなでリビングに集まって朝食に。玲緒奈も、味付けだけは控え目だけどそれ以外の点ではほとんど同じメニューを食べられるようになってるから、普通に一緒に食べられるんだ。まだ時々、こぼしたりするけどさ。


それを、


「大丈夫。次は気を付けてね」


沙奈子が穏やかに声を掛けながら拭いてくれたりも。



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