二千四百十四 沙奈子編 「犯罪行為の証拠」
二月五日。日曜日。曇り。
今日は、昼間は少し暖かかった気もするけど、夜にはまたそこそこ冷え込んできた気がする。それでも、大雪の時ほどじゃないのかな。
それはいいとして、『客による迷惑行為』が騒ぎになるのが止まらない。あちこちの飲食店で同じような行為をして、しかもそれを動画としてネットに上げてる人らが後を絶たないみたいだ。
どうしてそんなことをするんだろうね?。わざわざ自分たちで『犯罪行為の証拠』を人目に付くところに残そうという気持ちが理解できない。
これについて沙奈子と千早ちゃんと大希くんと結人くんと一真くんと篠原さんは、
「気持ちが分からない……」
「だよね~、はしゃいでるだけなのは見てれば分かるんだけど」
「うん、遊んでるつもりなんだろうな。本人たちは」
「で、その延長でウケ狙いでネットに上げると」
「いやいや、『ネットに動画をアップする』ってのがおかしい」
「怖いよね」
それぞれ口にした。さらに千早ちゃんが、
「マジ、『ウケる』と本人らは思ってるんだろうなってのは私だって分かるんだよ。実際、仲間内じゃそれで盛り上がってたりすんだろうけどさ。それにいくら全然知らない赤の他人がキレてたって、『このくらいのことでwww』みたいに感じるんだろうなってのも分かるよ。
千晶がまさにそのノリだもんね。子供を堕胎したことだって、取り敢えず見た目にはケロっとしてるよ。何人もに乱暴されたのだって、『ちょっとムカついた』くらいにしか思ってないみたいだしさ。同じように乱暴された女の人がそれで警察に訴えたりしてるのも、『大袈裟www』とか嗤ってんの。根本的に感覚が違うんだ」
呆れたように、吐き捨てるように、語った。これに対して一真くんも、
「だよな。うちの親もマジでそれなんだ。自転車盗んでくるのも、琴美のパンツ売ってたりしたのも、結人にもらったプレゼントを勝手にネットフリマで売ったのも、一ミリも悪いとか思ってない。あいつらにとっちゃ『当たり前』のことなんだよ。それが。俺はたまたまそれがおかしいってのを近所の人らの様子から察することはできたけどよ、それがなかったら俺もあいつらと同じになってたかもしれない。ものすごく嫌だけどな。
ああでも、それを『嫌だ』と感じるってのがもうあいつらとは違ってるってことなのか。気付けてマジ良かった」
忌々し気に語る。さらに結人くんも、
「まあな。俺だっておデブに出逢ってなかったら、もっとヤバい奴になってたと思う。それに今はお前らもいるしよ。お前らは動画上げてるような奴らのノリを面白いとは思わねえからな。そういうのを面白いと思ってる奴らとつるんでっと、それに合わせんのが当たり前になってくるんだろうなってのは俺も思う」
だって。
そんな千早ちゃんたちを見て、沙奈子もなんだかホッとした様子だった気がする。




