二千四百十三 沙奈子編 「ただその場のノリで」
二月四日。土曜日。曇り。
絵里奈がたまたま遭遇した『セルフレジを通さずに出てきてやったと自慢げに話していた人』の件については、きっと、
『なんでその場で通報しないんだ!?』
みたいに言う人もいるだろうな。だけど、そう話していること自体が事実なのか単なる『ホラ話』なのかは、たまたま耳にしただけの人間には判断できないから。それに、実際に万引きとかしてるその瞬間に取り押さえるのなら『私人逮捕』になるかもしれなくても、『ただそんな話をしているだけ』ならさすがに現行犯と言えるかどうか微妙だしね。
『正義』を声高に叫んでそれを振りかざすようなタイプの人は、そういうのさえ許さないかもしれないけど。
だけど僕は、『逮捕するかどうか』は、一般人には少しハードルが高くてあまり現実的じゃないと感じるとはいえ、
『犯罪行為を、それを実際にやってるかどうかはともかく自慢げに自分の子供に語る』
なんて行い自体が、大人として情けないと思う。ましてや親がそんなことをしていてどうして子供に影響がないと考えられるんだろう。その想像力のなさが不思議なんだよ。
『ただの悪ふざけだろ!?』
って言うかもしれないけど、近頃問題になってる『バイトテロ』や『迷惑行為』だって『ただの悪ふざけ』と思って本人たちはやってるんじゃないのかな?。実際にやってる行為は、『業務妨害』だったり『器物損壊』だったり『窃盗』だったりするのに。
『セルフレジを通さずに出てきてやった』というのも、それが事実なら当然のこととして『窃盗』だし、もし店の人がその話を耳にして事情を聞こうとしてくれば、その分だけ業務を妨害することになるんじゃないのかな?。だから『ただの悪ふざけ』じゃなくて『悪質な悪ふざけ』だよね?。
当人は、
『ただその場のノリで楽しんでるだけ』
なんだとしても、それ自体が『バイトテロ』や『迷惑行為』をしてる人らと同じ発想だと思うけどな。それをわきまえられないのが不思議なんだよ。ましてや『親』が。
でも、だからこそ思うよね。そういう人でも親にはなれるんだから、親ってやっぱりそんな大した存在じゃないんだって。資格も必要ないし、勉強だってしなくてもなれるし、子供さえいれば誰でも『親』なんだから。
それは、こんなことを言ってる僕もそう。僕だって大した人間じゃないし、間違いや失敗だってしょっちゅうだけど、仮にも親なんだよ。だから偉そうになんてできる理由がないんだ。
その事実を事実としてわきまえるという姿を、実際の手本として沙奈子や玲緒奈に示してるんだよ。




