二千四百九 沙奈子編 「承認欲求というのは」
一月三十一日。火曜日。晴れ時々曇り。
近頃また、『バイトテロ』とかいうのが問題になってきてるらしい。
それだけじゃなくて、あくまでただの客として店を訪れてる人らの蛮行についても、ネットに映像とかを気軽に上げられるようになったからこそ目に付くようになったみたいだね。
しかも、若い人だけじゃなくていい歳をした『本来なら大人と言われるはずの人たち』のそれも、いくつも見られるらしくて。
僕はそれが本当に情けない。
だって、こういう時すぐに、
『今どきの若い奴は』
とか言い出す人がいるけど、実際には『本来なら大人と言われるはずの人たち』にだってロクでもない振る舞いをしてる人はたくさんいるんだよ?。
ううん、違うな。若い人たちがわきまえない振る舞いをするのは、『わきまえない振る舞いをする大人』を実際に見てきてるからだと思う。今でさえ『わきまえない振る舞いをする大人の行状』が実際に映像などでネットに上げられたりしてるんだ。だったらそういう『本来なら大人と言われるはずの人たち』は若い頃からそうだったってことだよね?。若い頃からそうで、それが改まってないからそんな年齢になってもわきまえない振る舞いをしてるんだよね?。
そう言えば僕が大学に通ってた頃にも、バイト先での蛮行を『武勇伝』のように大声で笑いながら語ってるのは、同じゼミに通ってる人の中にもいたよ。
それどころか、僕の両親と同世代の人にだって、勤め先での蛮行をやっぱり武勇伝のように語ってる人はいた。ずっと以前からね。今はネットという簡単に情報を発信できるツールがあるからそういうのが目に付くようになったっていうのは確かにある気がする。
加えて、そういう形でたくさんの人が見るということ自体が、
『注目を浴びたい』
『承認欲求を満たしたい』
と考える人のタガを外してるというのもあるのかな。
だけど、『ネットがあるから』なんて言って我慢しないのは、
『誰かの所為にしてる』
『社会の所為にしてる』
以外の何だって言うんだろう?。
しかも、承認欲求というのは、
『その場のノリで羽目を外すことこそが正しいと考える陽気な人たち』
の方こそ強いような印象もあるかな。
こう考えること自体、『属性やカテゴリで一括りにして決め付ける行い』そのものだろうから、これを正しいとは僕も思わないけどさ。
でも少なくとも、そういうことをする人の周りには、『わきまえない振る舞いをすることこそを武勇伝と考える』ような人がいることは確かなんじゃないかなとは感じるんだよ。
特に親がそうだったら、その影響はとても大きいだろうね。




