二千三百九十七 SANA編 「学んで身に付けて」
一月十九日。木曜日。曇り。
最近、玲緒奈は絵本にハマってるみたいだ。
元々、絵本は読んであげてた。一歳の頃はそれこそ『じゃあじゃあびりびり』『ばいばい』『みんなでね』『いないいないばあ』とかを読んであげると興奮したように絵本をばしばし叩いたりしてた。その反応は決して『気に入らない』からのものじゃなくて『楽しくてテンションが上がってしまってる』というのが僕にも分かったよ。だから無理にやめさせるんじゃなくて、
「楽しい?」
って声を掛けるだけだったり。この時点で叱ってやめさせようとしても『なぜ叱られてるのか分からない』のは分かってたからね。そういうのを分かってもらおうとするのは、玲緒奈本人がある程度、自分のしていることを理解できるようになってからでいいと思った。
だってそうだよね?。大人になってからだって自分が知っているのとは違う常識とか慣習とかを学んで身に付けていくことはできるんだから、慌てる必要もないよ。それよりはまず、『相手の言葉に耳を傾ける』『相手の話に耳を傾ける』『相手の存在を認める』というのを感覚として学んでもらうのが先なんじゃないかな。それを身に付けてもらえてたら、後からいろいろ学んでもらうのも受け入れてもらいやすそうだし。『相手の言葉に耳を傾けない』『相手の話を聞かない』『相手の存在を認めない』というのを先に身に付けられてしまったら、言ってることを理解してもらうのも認めてもらうのも難しくなる気しかしない。
そんな玲緒奈は、今、『11ぴきのねこ』『ぐるんぱのようちえん』『これはのみのぴこ』『シオドアとものいうきのこ』『ねずみくんのチョッキ』『なくしたもの みつけた』『ぐりとぐら』『しょうぼうじどうしゃ じぷた』『のろまなローラー』『とらっく とらっく とらっく』あたりがお気に入りみたいだ。少し前までは『しろくまちゃんのほっとけーき』『こぐまちゃん おはよう』『はらぺこ あおむし』『ねないこ だれだ』とかが気に入ってたみたいだけど。
特に、『しょうぼうじどうしゃ じぷた』『のろまなローラー』『とらっく とらっく とらっく』といった、自動車とかが出てくる話は好きみたいで、読み終えても自分で最初のページをめくって、
「ん!」
って催促してくる。ちょっと大変だったりもするけど、僕と絵里奈と沙奈子で交代で読んであげるんだよ。それどころか、玲那に、スマホを使わずに読んでもらっても夢中になって聞いてたりする。ちゃんと頭に入ってきてるみたいだね。
それと、『絵本を読んでもらえてる』というのが嬉しいみたいだ。




