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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百九十三 SANA編 「成長を見守る以外」

一月十五日。日曜日。曇り。


昨日から何だか妙に暖かい。でもまだまだ寒さの本番はこれからのはずだから気を付けないと。




『SANA』の社員になることがほぼ本決まりになって、沙奈子がいよいよ僕の扶養から外れるのが具体性を帯びてきた。


本当にこれまでいろいろなことがあったと思う。だけど、大変だったり戸惑ったりの連続だったのは事実でも、こうして思い返してみても『つらかった』という印象はない気がする。もっともそれも、時間が経ったことで薄れてしまっただけかもしれないのかな。


その中で一番大変だった気がするのは、改めて小学校に通うために用意した持ち物すべてに名前を書いたり名前シールを貼らなきゃいけなかったりしたことかもしれない。今でもあの時の果てしなさはすごく頭に残ってる。


もちろん、児童相談所で沙奈子が自分の左腕をボールペンで何度も突き刺して血塗れになって救急車で搬送されたことも大変だったけど、ショックだったけど、不思議ともう『過ぎたことだ』っていう実感しかない感じかな。彼女の左腕の傷もぱっと見ではほとんど分からなくなってることも、そう思える理由の一つかもしれない。加えて、あれ以降、そういうことがなかったおかげで『ただの過去』にできてるのもあるかも。


ストレスが掛かると左腕をぎゅっと握る癖も、普段からそんなに見ることもないし。それが彼女の癖だというのも、実は割と最近気付いたものだし。


だからこれまで沙奈子のことばかり触れなくて済んでいたというの自体が、大切な時間だったんじゃないかな。平穏で淡々としてて波風もほとんど立たない、人によっては退屈で退屈で仕方ないと感じてしまうようなそれが、僕や沙奈子には必要だったんだよ。玲那の事件をはじめとしていろいろあったのは事実でも、それらは別に沙奈子本人に直接起因することじゃなかったし。『SANA』を立ち上げることになったのも、実際に骨を折ってくれたのは星谷ひかりたにさんと絵里奈だったからね。


沙奈子自身は、余計なことにはほとんど煩わされずにただただドールのドレス作りに集中できてた。自分の技術の研鑽に集中できてた。


そこまでやってもまだまだ未熟さはあって悔しい思いもしつつ、でもそれは彼女にとっては向上心に繋がるものだったから、むしろいいことだったんじゃないかな。


これからも、働きながらも技術を学んでいく意欲はあるみたいだ。そのために必要な資力も、今なら十分にある。アルバイト代として沙奈子本人が受け取っていたものに加えて、本来なら沙奈子に支払われるはずだった分を絵里奈が受け取って貯えてくれてたから。これからは使うべき時には使っていけばいいと思う。


ああでも、たとえ扶養は外れても僕の下にいる間は、僕が出したいと思うかな。そのために僕も貯えてきたんだから。お酒も煙草もやらない。沙奈子や玲緒奈れおなの成長を見守る以外に趣味らしい趣味もない僕がね。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >機能から何だか妙に暖かい 機能→昨日 ではないでしょうか? ……珍しいですね(゜o゜;
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