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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百八十八 SANA編 「次元が違うのは」

一月十日。火曜日。曇り。




今日は沙奈子たちが通う高校の始業式。いつものごとく課題は早々に済ませているから、みんな慌てた様子はない。


それはさておき、


『沙奈子を正式に『SANA』の社員として登用する』


ということが決まりそうだった。でもそれは同時に、


『僕の扶養から外れる』


ということでもあった。なにしろ、年収でイチコさんや田上たのうえさんを超えて玲那に匹敵するそれを手にすることになるからね。当然だ。沙奈子は『SANA』の屋台骨を支えるデザイナーであり職人なんだから。ただ同時に、高校生の間は学校を優先するからまだその程度ということもある。イチコさんと田上さんもまだ学生だから完全なフルタイムで働いてるわけじゃないし。でも、四月からはイチコさんも田上さんも正式に採用となって、玲那と同等程度の給与になる。玲那はリーダー的な立場だからその分の手当てがついてるだけなんだ。


一方で沙奈子は、学校を優先しながらも玲那のそれに匹敵する給与を得ると。


だけどそのこと自体に誰も不満は抱いてない。


「そりゃ沙奈子ちゃんあっての『SANA』だしね」


「当然ですよ」


イチコさんも田上さんもそう言ってくれていた。二人にとっても沙奈子は妹みたいな存在でもあるからだと思う。これが沙奈子のことをロクに知らない人だったら少し疑問には感じるかも。


でも、そういうのさえ納得させられるほどの仕事を沙奈子がやって見せればいいというのもあるかもね。実際、今でも沙奈子の作るドレスがなければ『SANA』は成立しないんだから。絵里奈も一緒にドレスや小物を作ってはくれてるけど、小物についてはともかく『ERINA』名義のドレスについては明らかに『デザイナーとしてのSANA』に大きく水をあけられているというのもある。


これに対して絵里奈は、


「悔しいと感じないと言えば噓になりますけど、実際のドレスのデザインを見ても沙奈子ちゃんのそれの方が華やかで惹きつけられるものが確かにあるんです。そんな現実を前にすれば些細なプライドなんて取るに足らない問題ですよ」


と笑ってた。


ドラマなんかだとここで絵里奈が嫉妬から『SANA』を割るような動きを見せるところかもしれないけど、


「私もネットオークションとかネットフリマを通じて自分の作品を売ってきてましたからね。その時の手応えからしても沙奈子ちゃんは次元が違うのは分かるんです。嫉妬とか何とかする以前の問題ですよ。私はそこまで愚かでいたくないです。でもまあ、そこで奮起できない時点で私のデザイナーとしての器はその程度ってことなんでしょう」


とのことだった。



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