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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百八十五 SANA編 「サメの人形」

一月七日。土曜日。雨。




新年早々、嫌なことがあったけど、こういうこともあるのが人生というのも事実だと思う。だから、そういうことがあった時にちゃんと発散できたり支えてもらえたりすることが大事だと思うんだ。それがなければ、誰かを攻撃することで発散しようとしたり、最悪、『生きるのが嫌になった』ということで、自分自身を終わらせようとしたり、自分以外の誰かも巻き添えにして破滅しようとしたり、ってことになるんじゃないかな。


そういう『嫌なことの積み重ね』を軽んじてると、大きな問題に繋がっていく気がするんだよ。だからそういうのを、極力、日常の中で発散、昇華していくことを心掛けていきたい。琴美ことみちゃんも、今度はもう家にキーホルダーを持って帰らないようにしたって。


「せっかく結人ゆうとがくれたのを家に持って帰れないってのは癪だけど、と言うか、こんなただのキーホルダーを『家に持って帰れない』ってのがそもそもおかしいと思うけど、あいつらが『そういう親』だってのも事実だからな。ちゃんとそれに対処しなきゃダメなんだろうな。自分を守るためには」


一真かずまくんがそう口にしたら、


「……待ってろ。ちょっと思い付いたことがある」


結人くんはそう言って、『ドール用の家具を作るための材料の余った部分』を工具で加工し始めて、一時間ほどで、キーホルダーのそれとよく似た『丸いサメ』の小さな人形を作ってみせたんだ。


「これなら売り物にならないし、持って帰っても大丈夫なんじゃないか?」


って言って琴美ちゃんに差し出した。さらに、


「もし売られたり捨てられたとしてもまた作ればいいしな」


とも。これに一真くんは、


「いいのか?」


申し訳なさそうにするけど、結人くんは、


「いいっていいって。どうせ捨てるもので作ったんだし」


だって。


「……ありがとう……」


琴美ちゃんはその『小さな丸いサメの人形』を受け取って、やっぱり大事そうにぎゅっと握りしめた。『こうやって心が救われていくんだな』と実感できる光景だと思った。


だけど決して『手作りのものをプレゼントしてもらえたから』というのが大事なんじゃない。そこを履き違えると、


『手作りのものを送れば気持ちが伝わるんだ!』


なんていう思い込みになってしまうんだろうな。重要なのは『結人くんの琴美ちゃんを労わる気持ち』であって、プレゼントはあくまでそれを形にするための方法でしかない。


『プレゼントを贈ることが労わる気持ち』でもないんだよ。そこをわきまえないとね。



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