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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百八十二 SANA編 「ぶーん」

一月四日。水曜日。曇り。




今日は『SANA』と僕が務めてる会社の仕事始め。いよいよ正月気分ともお別れだね。もっとも僕自身は、休みの間もずっとぼちぼち仕事をしてたけど。これは僕の性分だから別に苦にならない。


絵里奈も沙奈子と一緒になってドール用のドレスの制作に余念がなかった。対して玲那は、ずっと玲緒奈れおなと遊んでくれてた。


「れーな!。れーな!。ぶーん!」


玲那のことを最近では『れーな』と呼ぶようになった玲緒奈が、『ぶーん』を要求する。『ぶーん』というのは、玲那が床に寝転がった上で両手と両足で玲緒奈を支えて飛行機みたいに空中に持ち上げる遊びのことだ。


「ほっは!(おっしゃ!)。ははへほへ!(任せとけ!)」


僕がパソコンで仕事をしてる脇で、玲那が『ぶーん』で遊んでくれる。


「うけけけけけけけっ♡」


っていうなんとも悪い声を上げながら大喜びの玲緒奈に、僕も頬が緩むのを感じる。こうやって毎日毎日を楽しんでる彼女を見てるだけでホッとするんだ。


そんな玲緒奈は、玲那がスマホを使わないとちゃんと喋れないことについては、別に疑問にも思ってないみたいだった。それどころか、玲那がスマホを使わずに自分の口で言ったことも、ある程度は理解してる様子でさえある。ずっと傍でそれを耳にしてきたことで、聞き取れるようになったみたいだね。何も教えようとしてないのに。


だからやっぱり、子供は周囲の人間たちの姿を見て振る舞いを見て声を聞いて猛烈な勢いで学んでいってるんだって実感したよ。そしてそれは、僕たちが玲緒奈が伝えようとしてることに耳を傾けてきた真似なんだろうなとも思う。幼い頃の僕とも幼い頃の沙奈子とも幼い頃の絵里奈とも幼い頃の玲那ともまったく違う様子。周りにいるみんなが自分の味方なんだっていう実感があるんだろうなという印象。


もちろん、世の中には味方ばっかりがいるわけじゃない。いずれ保育園にでも通うようになれば、そこにはウマが合わない子とかもいるかもしれない。意地悪な子とかもいるかもしれない。そうやって嫌な思いも経験することになると思う。だけどそれは同時に、


『この世には敵しかいない。嫌な人しかいない。というわけじゃない』


というのを学ぶ機会でもあると思う。保育園で嫌な思いをすることがあっても、家に帰ってくればあたたかく迎えてもらえる、安心できる、油断できる、そういう場所もある人もいるってことも実感できると思うんだ。だからこそ、家はそういう場であるべきだと僕は思ってる。家族はそういう人であるべきだと思ってる。そういう家庭を築く努力を僕は怠りたくない。



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