二千三百七十九 SANA編 「新年だからこそ」
一月一日。日曜日。晴れ。
年が明けた。西暦二〇二三年。令和五年。『新型コロナウイルス感染症』についてもまだ完全には解消されてないままの年明けだけど、だからといってそんなことを気にしてても問題は解決されないから、やっぱり僕たちは僕たちにできることをしていこうと思うだけだ。慌てない。焦らない。目の前にある『対処すべきこと』を一つ一つ確実に片付けていくことを改めて心掛けることにする。
「というわけで、今年もよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしく~♡」
「よ~♡」
玲緒奈がいることもあって大晦日もいつも通りに過ごして、夜更かしもせずに寝て、だいたいいつも通りの時間に起きて新年の挨拶を交わす。なにしろ玲緒奈が、外が明るくなってくると目を覚ますんだ。それでさっそく遊びだす。お気に入りの自動車の玩具を手にして僕の体の上を走らせたりして。それこそ顔まで『道路』にして遊ぶから、寝てられないし。
それで僕が目を覚ますと、
「うけけけけけけ♡」
って、悪い顔で笑うんだ。これは、イチコさんや大希くんも同じだったらしい。ものすごく安心して信頼できてるからこそそんなことができるってことかもしれないね。もちろん、人それぞれというのもありつつだけど、イチコさんも大希くんも玲緒奈も、近い傾向を持ってるタイプってことかな。だったらそれこそイチコさんや大希くんみたいに育ってくれる可能性が高いわけだから、安心しかない。
だけどそれもあくまで、僕たちが彼女を歪ませてしまったりしなければの話だろうな。玲那だって、絵里奈と出逢うまでは本当に『人でも殺したことがあるんじゃないか?』『今はまだそうじゃなくてもそのうち人を殺したりするんじゃないか?』って感じの目付きや表情をしてたらしいし。今の普段の様子からは想像もつかないけど、実は、テレビのニュースとか見てる時に、特に子供が犠牲になった事件とかのそれが流れると、すごく怖い表情をすることがあるんだ。
こんな穏やかであたたかい心を持ってる玲那にそんな目や表情をさせてしまうというのが本当に信じられない。どうしてそんなことができてしまうんだろう。
そして玲那にそんな表情をさせるようになったのは、身勝手でなんでも自分に都合よく解釈して法律もルールも捻じ曲げる人たちだったことは間違いない。そういう人たちに踏みにじられてきたことで、彼女は歪んでしまったんだ。その歪みを今も抱えたままで、だけどそれと何とか折り合いを付けることができるようになったことで穏やかな表情もできるようになっただけ。
それだけなんだよ。
新年早々に考えるようなことじゃないのかもしれないけど、新年だからこそ改めてそれを心に刻み込まないといけないと思うんだ。




