二千三百六十九 SANA編 「努力義務」
十二月二十二日。木曜日。雨。
自転車のヘルメット着装が、『罰則のない努力義務』という形ではあっても義務化されるようだ。
僕はこれに対してもむしろ賛成かな。ただ、これさえ『馬鹿馬鹿しい』と言って無視する人はいるんだろうな。だけど、ヘルメットをしてたかどうかで、万が一の事故の際の責任割合とかが変化する可能性もあるとなれば、保険に入ることの意味を考えられるような人たちには無視できないもののような気もするんだけどな。
だって『万が一の事態を想定する』からこそ保険に入ったりするんだよね?。それと同じことのはずなんじゃないかな。法律とかルールを守るのだって結局はそういうことのはずだと思うんだ。
「法律を守らない人は、ちゃんと法律に守ってもらえなくなるからね」
とは、沙奈子にもいつも言い聞かせてる。
だけど、法律とかルールを守る気がない人はこれに対してもあれこれ難癖をつけて法律やルールを守らないことを正当化しようとするんだろうな。そういう行いが、結局、
『狡い人こそが得をする社会』
というものを作り上げていくとしか思わないんだけどな。そして実際、『狡い人こそが得をする社会』というのが出来上がってきてるんじゃないのかなって気もする。法律とかルールとか無視してウケを狙った振る舞いをして話題になることで注目を浴びて、それが収益に繋がるなんていう形で儲けてる人がいるんだよね?。
法律やルールどころか、『人としての道理』さえ蔑ろにしてても注目さえ集めれば成立する仕組みとかもできてるんだよね?。
『法律やルールをただ守ってるだけの人間なんて何も考えてない』とか言ってた人らがこういう社会を作り上げてきたんじゃないの?。『法律やルールに縛られずに自分の頭で考えて』来たのなら、こうなることも予測できたと思うんだけどな。
だけど僕がこう言っても、法律やルールを守る気のない人たちは耳を貸すことはないと思う。だからそういう人たちに考えを変えてもらうことは期待しない。僕たちは僕たちで自分たちがどうあるべきかというのを自分の頭で考えるだけだよ。
何を優先して何を後回しにするか、何を重視して何を重視しないか、自分たちで考える。
法律やルールを守ることを心掛けようと思うのは、あくまでも自分たちを守るためだ。『法律やルールだから』じゃない。
だから絵里奈に、僕のヘルメットも買ってきてもらった。『キャップヘル』と言われる帽子みたいなヘルメットだけど、今度から自転車に乗る時にはこれを使おう。万が一事故に巻き込まれた時にヘルメットをかぶってなかったことで補償額を下げられたりしたら家族の生活にも影響するしね。




