二千三百六十七 SANA編 「今年も終わりに」
十二月二十日。火曜日。晴れ。
今日は、沙奈子たちが通う高校の終業式。そして冬休みに入る。いよいよ今年も終わりに近付いたね。とは言え今回の年末年始も、例年のごとくただただ平穏にのんびりと淡々と過ごすことになると思う。『SANA』の方でも、別に忘年会や新年会とかは予定してない。と言うのも、絵里奈も玲那も、香保理さんのこともあって今はほとんどお酒を飲まないし、イチコさんはそれこそ、
「二十歳になってみて試しに飲んでみましたけど、何が美味しいのかまったく分かんない」
ってことでぜんぜん飲まなくて、田上さんも、
「私は、ちょっと舐める程度だったら大丈夫なんですけど、ビールをコップ三杯飲むだけですごく気分が悪くなるんです」
という話だったから、誰もまともにお酒を飲む人がいないんだよ。これじゃ『飲みニケーション』なんて成立しないよね。
それに、『SANA』は普段からみんながちゃんとコミュニケーションが取れてるから、今さらお酒の力に頼って本音を聞き出すようなことをする必要もないんだ。新しい人を雇うようになったらまた状況が変わってくるかもしれないとしても、少なくとも今はその必要がない。しかも、重要な提携先である山下典膳さんのギャラリーの責任者である山下さんも本人曰く下戸だそうだし。
「うちは、職員にはお酒好きなのも結構いるんですけど、私が飲めないから職員同士で飲みに行くのは好きにしてもらってても、会社としてはそういうの作らないんです」
ってことなんだって。山下典膳さん自身も、『飲めなくはないけど好きじゃない』とのこと。こういう点からも『類は友を呼ぶ』のかなって気がする。僕自身も『飲めなくはないけど好きじゃない』人だしね。沙奈子もまったく興味がなさそうだ。千早ちゃんも、
「酒の何がいいのかまったく分かんない。母親は飲むけど、飲むとそれこそ暴力ふるってきてたしさ。正直、『滅べ!』って思う」
楽しく飲めるのなら確かにストレス発散の役にも立ちそうな気もしつつ、ただ誰かに迷惑を掛けるだけの飲み方はそれこそ意味が分からないよ。ましてや事件を起こすとか、何のために飲んでるんだろう?。お酒の力に頼らなくてもコミュニケーションを取れてるなら、それこそ飲みたい人だけが飲めばいいんじゃないかな。ましてや楽しく飲みたいところで仕事の話とか誰かの愚痴を聞かされるとか絡まれるとか、それのどこが楽しいんだろうね。
僕はそうとしか思わないんだ。




