二千三百六十五 SANA編 「昔の私みたいに」
十二月十八日。日曜日。曇り。とても寒い。
玲那が言ってた。
「私が好きな作家さんの作品の中でキャラが言ってたんだけど、法律もルールも自分に都合よく解釈して捻じ曲げて好き勝手するのって『自分の頭で考えてる』って言えるのかな?ってさ。これ、私も思うんだよね。『法律とかルールとかに縛られずに自分の頭で考えるのが大事』みたいなことを言う人って、ホントにちゃんと考えてるのかな。自分のそういう身勝手がどんな影響を与えるか、ちゃんと考えてるのかな。
だってそうじゃん?。今、法律とかルールとか無視してでも注目を集めたら儲かるみたいなことになってたりするじゃん。ネットの配信とか特に。そういう『狡い人が得をする』みたいな流れになってるのって、結局は『法律とかルールに縛られる必要ない』みたいな考えが基になってんじゃないの?って感じるんだよ。私も。
それで言ったらさ、『ちゃんと考えてる人』ってそういうとこまで考えられるのが当たり前じゃないのかなあ?。『法律とかルールをただただ守ってるとか、自分で考えてない』みたいなこと言われたりもするけどさ、私は自分のすることが沙奈子ちゃんや玲緒奈にどんな影響を与えることになるか?って考えたら安易に無視したりできないと感じるんだ」
って。すると、ビデオ通話越しにその話を聞いてた千早ちゃんも、
「うん、マジそれだと思う。私もさ、あの人らのやってるのが当たり前だと思ってたんだよ。『法律とかルールとか真面目に守るのとかダッサ!』って感じなのが普通だと思ってた。
でも今は違うよ。小父さんや山下さんや絵里奈さんや玲那さんと見てたらさ、あの人らって結局は自分を甘やかしたいだけで、別になんも考えてなかったんだなって思うんだ。私がそんなことを当たり前だって考えてしまうようになるってことまでぜんぜん考えてなかった。自分がやってることが誰にどんな影響与えるか、これっぽっちも考えてなかったよ。
私は、今は結婚とか子供とか考えてないけど、もし自分に子供ができたらさ、昔の私みたいになってほしくないんだ。あの人らみたいになんてそれこそなってほしくない。だったら自分のしてることがどんな影響与えるかちゃんと考えなきゃだめだと思う。そういう影響とか考えてないのって、『ちゃんと考えてる』って言えないと思うんだよ」
そう語ってくれた。これに大希くんも結人くんも一真くんも、
「そうだよね」
「俺も、あいつらみたいになるとか考えたら、ヘドが出る!」
「俺の両親も、『法律とかルールとかに縛られないのがカッコいい』って思ってるタイプだもんなあ……」
って言ってたんだ。




