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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百六十四 SANA編 「居心地いいのに」

十二月十七日。土曜日。雨。




今日は沙奈子たちは土曜授業で、しかも、『大学での講義を模した形の授業』というのがあったそうだ。一コマ九十分。通常の授業の倍近い時間、講義を受けることになるけど、高校までの授業との違いを実感してもらうのが目的らしい。実際に大学に進んでから戸惑わないようにと。


今はそこまで考えてたりもするんだね。僕らの時は、『大学でのことは大学に行ってから学べ』的な感じでそれっぽいことはしてもらった覚えがない。


これについてもいろいろ言う人はいるんだろうけど、僕たちの頃は完全に土日は休みだったし、それを思えば月に二回から三回の土曜授業の中でそういうのを教えてもらえるというのは別に『甘やかされてる』ってことにはならないんじゃないかな。


ところで、イチコさんと田上たのうえさんについては、大学卒業と同時にやっぱりこのまま『SANA』の社員を続けることになりそうだ。


「いや~、せっかく居心地いいのにここからまた就活とか、キッツいでしょ」


とはイチコさんの弁。確かに、共感しかない。それにイチコさんも田上さんもすごく真面目で熱心に仕事してくれて、『SANA』としてもとても必要な人材だった。二人とも、


『相手に話に耳を傾ける』


ことができる人たちだしね。


イチコさんは最初から、田上さんはイチコさんと友達になってからそうなれたそうだ。イチコさんの場合はそれこそ父親の山仁やまひとさんの振る舞いをそのまま真似てるから。そして田上さんの場合は、イチコさんと出逢って友達になって彼女にたくさんたくさん話を聞いてもらってるうちにそれを真似できるようになっていったって。なにしろ田上さんの母親はまったく相手の話に耳を貸さない、常に自分の意見だけを押し通そうとするタイプの人で、彼女も『それが当たり前』『人間関係は自分の意見を押し付けることができた方が勝ち』だとずっと思ってきたって。


だけどイチコさんに話を聞いてもらってるうちにそっちの方がずっといい関係を築ける実感が湧いてきて、今は、


「相手の話を聞こうともしない人とはまともに関わりたいとも思いません」


だそうだ。もちろん仕事となると必ずしもそれが通るわけじゃないけど、少なくとも相手の話に耳を傾けた上で考えることはできてるんだって。


これは、波多野さんも同じ。バイト先でも、熱心に相手の話を聞こうとする姿勢が評価されて、上の人たちに気に入られてるとも。今回の『新型コロナウイルス感染症』の件で社員としての登用については延期されてるそうだけど、


「他のバイトはすぐ辞めるから、波多野さんにいてもらわないと店が回らない。だから社員にはなってほしい」


とまで言われてるって。



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