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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百六十三 SANA編 「なかったことに」

十二月十六日。金曜日。曇り。




今年ももう残り半月。振り返ってみれば大希ひろきくんの家出騒ぎに不登校、沙奈子たちの高校進学、『SANA』の本社機能移転、『人生部』の設立。一真かずまくんと琴美ことみちゃんの人生部加入。篠原さんの人生部加入。秋嶋あきしまさんの新型コロナ感染症罹患。千晶ちあきさんの妊娠と堕胎等々、それなりにいろいろあった一年だったかな。


それでも僕たちは淡々と暮らすことを心掛けてた。たとえ何か不幸なことがあったとしてもそれをただ嘆いて狼狽えてさらにつらい状況を招くようなことはしたくないと考えて実行したつもりだった。


千晶さんの件はさすがに命に関わる話だったから思ってた以上にストレスが掛かった気もするけど、だからといって僕たちが騒いでも何も問題は解決しないからね。当の千晶さん自身が早々に幕引きを図ることを望んでたみたいだし。そうじゃなきゃ、彼女に乱暴した人らのことを、彼氏も含めて刑事告訴でもしてたかもしれない。状況的には彼女が被害を訴えてたら十分に刑事事件にできただろうしね。


でも、千晶さんはそれを望まなかった。そして千早ちはやちゃんが傍で見てても、


「もう、なかったことにしてるみたいです」


と呆れるくらいに平然としてるそうだ。千晶さんの本心がどこにあるんだとしても、赤の他人でしかない僕たちにはもう何もできることはないと思う。もしショックを受けて泣き暮らしてるようなら放って置けない気はしつつ、そうじゃないから。生き方や在り方というのはそれこそ人それぞれなわけで。僕だって自分の生き方や在り方に余計な口出しとかされたくないのは事実だよ。


それを望んでない人に口出ししたり干渉したりしてくる人はそれこそ相手の気持ちを慮ってるんじゃなくて自分が気持ちよくなりたいだけなんだとすごく思う。ただの自己満足だよね。しかもこう言うと猛然とキレたりするんだ。そうやってキレて攻撃するってことは、やっぱり相手のことを慮ってない証拠じゃないの?。慮ってるならそんなことできるはずがないと思う。


それが結果的に上手くいくことがあったとしても、もし上手くいかなくてかえって状況を悪くしても責任なんか取ってくれないだろうし。そんなのが『優しさ』だなんて、本当にロクでもない。だから僕は『優しい』とか『優しさ』って言葉が好きじゃないんだ。自分の身勝手な押し付けをいいように粉飾するためにも便利に利用される言葉だし。


大事なのは実際に相手の助けになることのはずだよ。相手を振り回すことじゃないし、ましてや堕落させるためにすることじゃないんじゃないかな。



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