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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百四十九 SANA編 「性というものを」

十二月二日。金曜日。晴れ。




僕は別に、『性』というものを忌避するつもりは、今はもうないんだ。昔は、


『こんな世界になんか生まれてきたくなかった』


という気持ちもあって、『この世界に生まれてくるきっかけになる性というもの』に対する嫌悪感がかなり強かったのが、今なら分かる。僕が性に対して積極的になれなかった原因の一つなんだろうなっていうのを感じるんだ。極度の人間不信だったのも含めてね。


ああでも、『極度の人間不信』というのも、結局は『こんな世界になんか生まれてきたくなかった』って感覚としっかり関わってるだろうから、ある意味では一体とも言えるのかな。


いずれにせよ、今の僕を取り巻く人間関係を考えたら、忌み嫌う必要がないと実感できてる。玲那が落ち着いていられてるのもそれだと思う。そうじゃなかったら、彼女はもっと過激な行動に出ていた可能性もあると感じるんだ。男性すべてを敵と見做してね。


もちろん、自分を傷付けた『加害者』たちのことは一切許してはいない。それは事実だ。何度も言うように、許されるのなら全員を探し出して殺してやりたいと考えてるのも嘘じゃない。本人の口からはっきりとそれは聞いてる。


だけどその上で、


『今の幸せを壊してまでそんなことをしたいとは思わない』


というだけなんだよ。その『壊したくない幸せ』を実現できてることが何より大事なんだ。だからこそ、千早ちはやちゃんも波多野さんも自分を抑えることができてるというのもあると思う。だったら、今のこの幸せを守るのが僕の役目なんだ。そしてそれは、誰かを攻撃することでは成し得ない。


身を守るのは必要でも、こちらからわざわざ攻撃を仕掛けるようなことをする必要はまったく感じない。


ネットで誰かを罵ることも、誰かをイジメることも、僕たちの今の幸せを守る役には立たない。


もちろん、いろいろと大変なことがあるのも事実だよ。でもね、『何一つ大変なことがない人生』なんていうのもきっと滅多にあることじゃないはずなんだ。


なにより、人間はいつか必ず死ぬ。死に向かって生き続ける。この事実を考えるだけでも『何一つ大変なことがない人生なんて有り得ない』って分かる気がするんだけどな。


それを思うと、千晶ちあきさんの件も、人生の中で起こるあれこれの一つでしかないんだろうなって気もするかな。生まれてこれなかった命のことを考えたらすごくつらいけど、


『どうして僕のところに来てくれなかったんだろう……』


って思ってしまうけど、だけど何もかも自分に都合よくいくわけじゃないというのもやっぱり人生だからね。



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