二千三百四十四 SANA編 「理解できないかな」
十一月二十七日。日曜日。晴れ。
何やら、不妊治療の一環として『子宮移植』が認められるような流れになってるようだね。
これについて、沙奈子や千早ちゃんや大希くんや結人くんや一真くんや篠原さんも交えて、絵里奈や玲那も一緒になって話し合う。
「私は、そこまでするっていうのはよく分からない」
沙奈子が口にすると、
「あ~。私もだよ。ただ、千晶姉えみたいに、『子供なんか欲しくない』と思ってる相手から『子供が欲しい』と思ってる人にならあげてもいいんじゃないかと感じてる。てか、要らんでしょ。あいつには……!」
千早ちゃんが、隠しきれない憤りをにじませつつ吐き捨てるように言った。これも彼女の正直な気持ちだと感じた。それに対して、
「千早の場合はそう思っちゃうかもだけど、僕はさすがにそこまでは思えないかな」
と、大希くん。さらに結人くんが、
「だな。千早のは、姉貴にムカついてるってのがでかいだろ。『子宮移植してまで子供が欲しい』みたいに思ってる奴の気持ちとか関係ないだろ?」
やや辛辣にも思える指摘を。すると千早ちゃんは、
「……確かに、そういうのもないとは言わないけどさ……。だけど、子供が欲しいと思ってる人にできなくて、『子供なんか要らねえわ』とか言って簡単に殺すような奴がホイホイ妊娠できるってのが納得いかないってのは本音だよ。子供要らないんなら欲しい人に子宮も卵巣もあげちゃえよ。そしたらいくらでも好きにヤれんだろ」
明らかに苛立った様子でそう口にした。すると、それを僕の膝に座って見ていた玲緒奈が立ち上がってモニターの中の千早ちゃんに、
「ちーちゃん、よしよし」
って言いながら、画面の中の彼女の頭を撫でてくれた。千早ちゃんがつらそうにしてるのを玲緒奈も感じたからだっていうのが分かった。
これに対しては、
「玲緒奈ちゃ~ん、ありがとう~……!」
千早ちゃんも相貌を崩して腕で涙を拭うような仕草をしてそう言った。少し気分が和らいだのが、声の調子からも分かった。もちろん千早ちゃんから見たら玲緒奈がモニターの下の方に見切れた状態で近付いただけでしかなかっただろうけど、慰めようとしてくれたのは伝わったと思う。
そんな様子に、みんなちょっとホッとした空気が。
そうして玲緒奈が僕の膝に戻ると、今度は一真くんが、
「だけど俺はやっぱり、『そこまでするのはどうなんだろう』って思わなくもないんだ」
素直な意見を。さらに篠原さんも、
「私も、千早のお姉さんみたいなことはどうかと思うけど、だからって移植までするのは今はまだ理解できないかな……」
だって。




