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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百三十四 SANA編 「なんであの子は」

十一月十七日。木曜日。晴れ。




昨日、千早ちはやちゃんはこうも言ってた。


千晶ちあきえの子供ってことは、私にとっては姪か甥ですよね?。山下さんにとっての沙奈と同じってことですよね?。なのに私はその子のことを助けてあげられなかったんです……」


って……。だから、千晶さんの子供について沙奈子を重ねてしまったことで余計に感情的になってしまったんだろうなって感じた。だけどそれについては、


「違うよ、千早ちゃん。僕が沙奈子のことを助けられたのは、本当にたまたまなんだ。僕に力があったとかそういうんじゃない。たまたま上手くいってしまっただけ。だからほんのちょっと歯車が狂ってただけで、沙奈子はここにいなかったかもしれないんだよ」


と言わせてもらった。これが僕の本心だった。嘘偽りない、ね。


さらに絵里奈が、


「そうだよ。千早ちゃんには何にも責任はない。何も悪くないよ」


って言ってくれて、その上で玲那も、


「パパちゃんや絵里奈の言うとおりだよ。千早のせいじゃない」


って。


そうして、沙奈子が、


「千早……、私とその子は別の人だよ。私と同じってわけじゃないよ……」


諭すみたいに口にした。


ああそうだ。立場的には似てても、沙奈子と千晶さんの子供は別の存在で、異なる結末になってもそれ自体が当然なんだ。だから僕も、


「そうだね。千晶さんは僕の兄じゃないし沙奈子の父親でも母親でもない。だから違う決断をしてもそれ自体が当然なんだよ。千早ちゃんの責任でどうにかなることじゃないんだ……」


と言わせてもらった。それに対して千早ちゃんは、


「ちくしょう……。ちくしょう……」


悔しそうに何度もそう言いながら泣いた。自分の無力さや、『違う』という現実そのものがやるせなかったんだろうな。


「親がどんなのでも、私たちは幸せにやれてるじゃん……!。なんでだよ……!。なんであの子はダメなんだよ……!。ちくしょう……!」


千早ちゃんのその言葉がすべてだと思った。僕たちはみんな大体、決して好ましい親の下には生まれてこれなかった。大希ひろきくんやイチコさんは山仁やまひとさんっていう立派な人の下に生まれられたかもしれないけど、その山仁さんの父親はそれこそ七人もの人を死なせた元死刑囚で、大希くんもイチコさんも『殺人犯の孫』として生まれてきた。なのに幸せに生きられてる。


その実例を知ってるからこそ、千早ちゃんは悔しかったってことか……。千晶さんや血縁上の父親がどうでも、その子にも幸せになれる可能性があるのは分かるから……。



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