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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百三十二 SANA編 「やっぱりまだ子供」

十一月十五日。火曜日。晴れ。




「こんにちは、お邪魔します」


そう言って千早ちはやちゃんと一緒に人生部の部室のドアを開けて入ってきたのは、篠原さんだった。どうやら、千晶ちあきさんの妊娠のことでショックを受けてる千早ちゃんのことを放っておけなかったみたいだ。自分の大希ひろきくんへの想いや考え方の違いへのわだかまりより、千早ちゃんを支えてあげたいっていう気持ちが勝った感じかな。


取り敢えず他のあれこれは脇に置いてでも、彼女にとっては千早ちゃんが大事だったってことかもしれない。


本当に人生って皮肉だらけだなって思う。僕が両親から愛されなかったこと、沙奈子が両親から愛されなかったこと、絵里奈が両親から愛されなかったこと、玲那が両親から愛されなかったこと、イチコさんと大希ひろきくんがお母さんを早くに亡くしたこと、星谷ひかりたにさんが不器用なご両親の愛情を上手く感じ取れなかったこと、波多野さんが家族との関係を上手く築けなかったこと、田上たのうえさんが家族との関係を上手く築けなかったこと、鷲崎わしざきさんが僕との関係を上手く築けなかったこと、結人ゆうとくんが両親から愛されなかったこと、一真かずまくんと琴美ことみちゃんが両親から愛されたなかったこと、それらすべてが今の僕たちの在り方に繋がってるんだからね。


山仁やまひとさんだって、決して両親に恵まれたわけじゃなかったし。


そういう『好ましくないこと』を結果として活かせたから、今の僕たちがいるんだ。篠原さんもそうやって人生の皮肉を体現することになるのかな。


それがどうだとしても、やっぱり一度は関わった相手なんだから、幸せになってほしいというのは間違いなくある。


「おかえり」


沙奈子が当たり前のこととして迎えてくれると、


「うん……」


篠原さんも、少し気まずそうにはしながらも笑顔で応えてくれた。大希くんも結人くんも一真くんも、そのまま受け入れてくれる。自分たちの人生が順風満帆じゃないことをちゃんと理解した上で人間としてどうやって生きていくかを考えられてるから、篠原さんに対して嫌味を言ったりもしない。その程度の『上手くいかないこと』は、僕たちの間では普通なんだ。


こうして篠原さんも再び人生部の活動に参加するようになったものの、千晶さんの妊娠のことについてはまだ結論が出ないらしい。


「はあ、もうホント、いい加減にしてほしいっての」


千早ちゃんが忌々しそうにそう呟くのを、篠原さんが背中を撫でてくれていた。沙奈子も隣に座って寄り添ってる。


これまでみんなを支えることの多かった千早ちゃんだけど、こうして見るとやっぱりまだ子供なんだなって感じるな。



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